【開発者インタビュー】ソニー/XEL-1--有機ELテレビがテレビの世界を変えていく - (page 2)

インタビュー・文:鈴木桂水2007年11月30日 19時21分

実用化困難と言われたパネル寿命を延ばせた理由

--有機ELの寿命はどのくらいなんですか?


白石 有機ELテレビを作っていて、まず聞かれるのがパネルの寿命です。一般に有機ELに使用する発光体は液晶テレビなどよりも寿命が短く、実用化は困難と言われていました。

 しかしソニー独自の技術を開発することで、実用に耐えられる長寿命な有機ELパネルの開発に成功しました。有機ELパネル部の寿命は、スタンダードモードでテレビ番組を視聴いただいた場合で約3万時間あり、毎日8時間使用しても10年は使えます。これは購入時に比べ明るさなどが落ちる年数なので、10年が経過したからといって、いきなりテレビが映らなくなるわけではありません。利用の目安だと考えてください。

--従来の有機ELは画面が暗いという印象を受けましたが、XEL-1の画面はかなり明るいですね。

白石 これも先ほどお話しした長寿命化に通じる技術に関係しています。ソニーのXEL-1はスーパートップエミッション方式を採用した有機ELディスプレイを採用しています。この方式はボトムエミッションという方式に比べ、効率よい有機ELディスプレイを作れるのが特徴です。

パネルの基本構造 パネルの基本構造 有機ELパネルには画素ごとにTFT回路などの画素回路が必要。このTFT回路と発光する有機物質の配置により、ボトムエミッション方式とトップエミッション方式が存在する。ボトムエミッション方式は製造こそ簡単だが、TFT回路越しに発光するので画面が暗くなる。トップエミッション方式は光の取り出し口に画素回路がないので有機発光体の光を効率よく取り出せる。そのため低消費電力で長寿命の製品を製造可能だ。ただし製造工程はより複雑になる

有機ELパネル新駆動回路が実現した明るさ

白石 駆動方式にも工夫があります。XEL-1は明るいシーンを表示するときに画面全体を明るくしているわけではありません。明るい部分と暗い部分で差をつけることにより自然光に近い表示をします。XEL-1が搭載する有機ELパネルの画面輝度はピーク値として最高600cd/m2の明るさがあります。

 ピーク輝度とは画面の1部分を集中的に明るくした場合の数値です。これは1部分に集中していても、分散していてもかまいません。XEL-1は画面の面積に対して1/3をピーク輝度で表示できる設計になっています。これにより光の強弱ができより立体的な映像を表示出来ました。

 地デジ番組の入力レベルを計測すると、面平均で150cd/m2程度です。明るいスタジオの撮影などでも400cd/m2程度なので、画面全体を明るくするのではなく、映像に対してメリハリをつけて表示することでよりリアルな表示をしています。

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