LinuxベンダーのRed Hatが、Microsoftが欧州委員会(EC)と和解した特許方針について、オープンソースのライセンスモデルとの間で互換性がない恐れがあると、懸念を表明した。
欧州第一審裁判所 (CFI) の下した独占禁止法違反との判決に従うというMicrosoftの最近の決断について、Red Hatはこれを歓迎している。だが、同社で顧問弁護士を務めるMichael Cunningham氏によると、Microsoftの特許モデルに関しては依然懸念を感じているという。
Cunningham氏は声明文の中で、次のように述べている。「Microsoftの独占的地位濫用に関する裁判について、現在われわれはECの発表を精査しているところだ。(22日の)発表で大きな前進があったことに対しては、ECに祝意を表したい。しかし、同社の特許モデルがオープンソースのライセンスモデルと互換性をもつような形にはなっていないのではないかとの懸念があり、われわれの喜びもいくぶん水を差されてしまう。とりわけ、オープンソースモデルが競争を促進することで消費者にメリットをもたらしていることを考えると、懸念はいっそう高まる。したがって、今後発表される両者間の合意内容の詳細を十分に注意して検証していくつもりだ」
法律事務所のPinsent Masonsに務める弁護士で競争法の専門家のAngelo Basu氏は、Microsoftが欧州当局の裁定に従うことは、欧州のソフトウェア業界におおむね良い影響を及ぼすはずだと指摘する。
Basu氏によると、もしMicrosoftがCFIの判決を不服として欧州裁判所に控訴していた場合、今後も不確実な状態が続いていたと考えられ、その懸念がなくなったことがソフトウェア業界への影響としては大きいという。
Basu氏は、ZDNet UK宛てのメールでこう述べている。「ECの裁定を不服としてCFIに控訴したことで、Microsoftは強硬路線に転じ、相互運用性情報へのアクセスに関するロイヤルティについて、ECや競合他社がとうてい容認できない高い料金を課すという契約条件を認めさせようとした。さらなる控訴が繰り返されて、両者の係争が今後も続く可能性も十分にあったわけで、もしそうなっていたら、最終的な判決が出るにはあと何年もかかっただろう。今回の控訴断念で、今後、Microsoftの情報がライセンス提供される際の条件が明確になったようなので、各企業はMicrosoftとの闘いにエネルギーを費やすのではなく、ソフトウェアの開発や販売に再び力を注げるはずだ」
Basu氏は、Microsoftの決断はまた、Microsoftと同様の立場にある他のIT企業に対しても、係争中の開発者と同様の和解を考えるべきとのメッセージを送ることにもなる、と記している。
また、Basu氏によると、今回の和解でECは、相互運用性情報の共有を渋ったり、高額のライセンス料を要求する他の企業に対しても、効果的な法的措置を講じられるとの自信を強めたはずだという。
今回の和解は、欧州のオープンソース開発者にとっても良い影響を及ぼすものだとBasu氏は述べる。というのも、これでMicrosoftは、開発者を特許侵害で訴えたりせずに、ソフトウェアの配布業者やエンドユーザーに注力すると約束したようなものだからだ。
「この和解により、独立系のオープンソース開発者たちが活躍する分野では提訴される恐れはほぼなくなるだろう。(訴訟になれば)こうした開発者たちは多額の費用をかけて自らを弁護するだけの資金力に乏しく、結果として技術革新や新しい製品開発の継続が困難になる恐れが高いからだ」とBasu氏はメールに記している。同氏はさらに、今回の決定によりMicrosoftのリソースが注目されることになり、同社のライセンス条件を受け入れない決断をした商用製品の開発者やディストリビュータは、Microsoftとは縁を切れないということを思い知らされることになるだろうと指摘する。
「1980年代のIBMに対して法的措置を行った時と同様に、ECはMicrosoftの行動を再び監視する必要がないように、この調査、およびその結果として生まれる和解条件は『これが最後となる』ような最終的な解決策でなければならないと考える可能性が高い。だとすると、和解条件に含まれないMicrosoftの傍若無人な振る舞いは除くとしても、各ディストリビュータはECがMicrosoftから引き出した条件以上のものを獲得できる余地はほとんどないだろう」とBasu氏は述べた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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