米BitTorrentが日本法人の設立を発表して1カ月。10月22日には同社初となるカンファレンス「BitTorrent Conference 2007」を開催し、同社の現状や日本における今後の戦略を説明した。
BitTorrent代表取締役社長の脇山弘敏氏は、「いよいよ商用化がはじまるBitTorrentDNA」(Delivery Network Accelerator)をテーマに講演。BitTorrent DNAの優れた特徴と日本でのビジネスモデル、また米国においてコンテンツホルダーの信頼を得た実績などを改めてPRした。
日本ではWinnyやShareといったソフトでの違法なファイル交換など、ネガティブな印象を持たれているPtoPだが、グローバルで見るとインストールベースでのユーザー数は1億5000万以上、日本を除くインターネットの全トラフィックのうち40%がBitTorrentのトラフィックであると言う。
また、BitTorrentDNAについては「サーバクライアント方式の持つ優れたセキュリティ管理能力とコントロール性能、PtoPの持つ優れた効率性という、双方の機能を併せもつハイブリッドソリューション」と紹介。自社が運営するサーバ(Tracker)がPeerを集中管理することによって、PtoPの難点とされた著作権管理を可能にしたと説明した。
こうした著作権管理能力の向上により、約1年間で米国55社のコンテンツパートナーと契約。国内企業では角川グループホールディングスとも提携している。特に不正流通に対して厳しい目を光らせている全米映画協会に唯一「PtoPベースのコンテンツ配信が認められた」ことで、その有効性が改めて証明されたとした。
BitTorrentのビジネスモデルについては、「コンテンツ配信におけるシステム提供サービス」と「クライアント・ソフトウェアのOEM供給」に絞ると説明。米国で展開しているコンテンツ販売事業については「コンテンツホルダーへのシステム提供のみ」にし、自らコンテンツを販売することはないとした。
クライアント・ソフトウェアのOEM供給については、NASやルーター、セットトップボックスなどへのライセンスによって収入を得る構造。今後は家庭用ゲーム機、HDDレコーダーなどへも幅を広げ、購入したコンテンツをテレビ画面上で視聴するサービス展開に興味を示した。
また今回、財団法人マルチメディア振興センターが立ち上げた「PtoPネットワーク実験協議会」への参加が決定したことを発表したほか、Jストリームとのコンテンツデリバリネットワーク(CDN)事業協業も明らかにされた。今後はJストリームのCDN事業とBitTorrentDNAによるハイブリッド配信を行うという。
さらに、国内有力コンテンツホルダーでもある角川グループホールディングスの出資についても紹介。国内機器ベンダーや動画配信システム各社とも提携、協業が進んでいるとし、今後も国内で積極的に提供先を増やしていくとした。
角川デジックス代表取締役社長の福田正氏は、BitTorrentへの出資について「ともに不正コンテンツ流通をなくしていくため」と説明する。
「不正流通が横行する背景には、コンテンツホルダー側がユーザーの求める声に応じていない、つまり安価で求められるコンテンツを提供できていないこともある。権利者を守ることはもちろん必要だが、一方で業界を支えるユーザーの声に応えて求められるコンテンツを適正に流通させることも必要」(福田氏)。
また、BitTorrentが日本に拠点を置くことで、「不正流通の撲滅」に力を入れていくという姿勢を示したことにも一定の評価を見せており、「自社が権利を持つコンテンツだけではなく、日本全体のコンテンツ保護に力を入れていきたい」とした。
今後のPtoP戦略については、「DVDクオリティの映像コンテンツ提供」やSecond Lifeなどへの展開、コンテンツ特性にあわせた配信方法の検討(VOD、DTO、サブスプリクションなど)などを提示。高画質映像配信には特に力を入れ、HD映像配信への挑戦、DNAとFlashPlayer9.1(H.264対応)を利用した高画質・大容量映像コンテンツのPtoPストリーミング配信も予定していると紹介した。
また、今後のロードマップも提示。2007年10月にBitTorrentと共同で実証実験サイトを開設し、年内にコンテンツを投入していき、2008年7月〜9月にはPtoPを利用した動画配信サービスをプレオープン、同10月〜12月にはPtoP動画配信サイトを正式オープンする予定だと説明した。
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