全米映画協会(MPAA)の広報担当Kori Benanrds氏はこのようなコメントを寄せている。「まだこの特定の技術を目にしていないが、消費者に正規のコンテンツを提供し、著作権を保護しようとする試みであれば、われわれは何でも支持する」
しかし、なかには新しいシステムの仕組みを知って落胆する人もいたようだ。
YouTubeに対する最初の著作権侵害訴訟を起こしたジャーナリストのBob Tur氏は、このたびの画像認識技術ではYouTubeに投稿された不法コンテンツの大半を見逃してしまうだろうと述べた。YouTubeの不法コンテンツは、加工されていたり、画質が悪かったりするからだ。さらに、投稿されたコンテンツが本当に投稿者のものであることをGoogle自身が確認すべきであり、著作権者側にその責任を押し付けるべきでないと、Tur氏は主張する。
「著作権者にとっては、平手打ちを見舞われた気分だろう。われわれがあなたのコンテンツを侵害してしまうことのないよう支援してください、あなたの著作物のコピーを全部提出してくれれば残りの作業をやりますから、と言っているようなものだ」(Tur氏)
法律事務所Proskauer Roseの弁護士Lou Solomon氏も同意見だ。同事務所はYouTubeに対する集団訴訟で原告たちの代理人を務めている。「フィンガープリントを用意して、クリアリングハウスをサーチするだけで済む話だ。ビデオにフィンガープリント技術を用いている会社はたくさんある。コンテンツのコピー全体を手に入れる必要などない」とSolomon氏は述べる。
YouTubeの幹部は、コンテンツ所有者に作品のコピーを提供するよう求めることは不当ではないと主張し、著作権コンテンツの識別以外の目的には使用しないと述べた。
King氏は、完全なアーカイブを提出するよう映画会社などに求めるのは妥当かと問われ、「コンテンツコミュニティに協力してもらう必要がある。著作権者の側であれば、より重要な資産を守るための優先順位を決められる」と回答している。
YouTube幹部らは、家庭で録画したテレビ放送のビデオや、投稿前に字幕の入れられたビデオを、システムが正確に著作権コンテンツと認識する様子をデモして見せた。
もっともYouTubeのLevin氏は、画質の劣るビデオほど、著作権コンテンツとのマッチングが難しくなることを認めている。しかしKing氏は、完全な品質のものが投稿された場合に比べて、画質の悪いビデオの投稿について、映画会社は問題視しないだろうと述べた。
King氏によれば、ここ1週間程度の試験でYouTubeの新システムは、Hearst-Argyle Groupのビデオを18件検出したという。しかし、試験で使われたサンプルのサイズについては言及がなかった。
Computer & Communications Industry Association(CCIA)や電子フロンティア財団(EFF)の弁護士Fred von Lohman氏は、YouTubeのシステムについて、Digital Millennium Copyright Act(DMCA)で認められたフェアユースの範囲内に相当する著作権ビデオを識別できるのか、疑問を呈した。引用やパロディもフェアユースに該当する。
von Lohmann氏は「YouTubeからのコンテンツ削除を求めて不当な要求をするコンテンツ所有者もおり、EFFはこうしたコンテンツ所有者に対する訴訟をたくさん扱っている。YouTubeの新しいシステムのおかげでこういうケースが増えるのは見たくない」と述べている。
これまでGoogleは、フィルタリング技術の提供に二の足を踏んでいるとして、映画会社から批判されてきた。MySpace.com、 Break.com、Gubaなどはフィルタリング技術の導入や人によるチェックを実施している。それでは、YouTubeではなぜ、こんなに時間がかかったのだろうか?
このようなシステムを構築するには、非常に複雑な作業が伴う。これは、Googleが何年もかけて取り組んできたプロジェクトであり、(YouTubeの)買収によって、優先順位をあげられたものである。技術をきちんとしたものにするため、今の今までかかった」(King氏)
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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