大量の情報の中からユーザーが求める情報やサービスを的確に検出する共通技術を開発し、新たな情報サービスを創出することを目的に、経済産業省が進めている「情報大航海プロジェクト」。この意義や活動について、慶應義塾大学環境情報学部 教授の小川克彦氏が10月3日、千葉幕張メッセで開催中のIT・エレクトロニクスの総合展示会「CEATEC 2007」で「情報大航海が創るあなたに優しい新サービス〜次世代検索・解析技術を通じたビジネス/イノベーション環境の創出〜」と題し講演した。
情報大航海プロジェクトは、2005年12月に経産省によって発足したプロジェクト。画像・映像などウェブ上で多種多様な情報が急速に増加しているのに加えて、医療や流通、教育分野などウェブ以外の場所で蓄積されるデジタル情報を有効に活用する手段を求める声が高まっていることに応えるものだ。
小川氏はまず、眼を持った三葉虫に対抗するためにさまざまな生物が誕生した、カンブリア紀の生命大爆発を、現代の情報大爆発とプロセスが似ていると指摘した、東京電機大学教授の安田浩氏の説を例えに出しながら「現代の『三葉虫』は、膨大な情報の中から自分の糧になる情報を見つけ出す検索エンジンだ」とし、その中核に位置するのがGoogleであると語った。
また、現在、ネット上のウェブページの数は300億ページとも言われるほどに膨れ上がり、ブログ、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)などのコンシューマージェネレイテッドメディア(CGM)の普及により、個人レベルでの情報発信量が無限大に広がっていると指摘。こういった中で情報大航海プロジェクトでは、次世代の検索エンジンを「量の検索でなく、個人の生活や企業活動の質を向上させる情報サービスを提供する」というコンセプトで開発していると解説した。
また、情報大航海プロジェクトで2012年の実現を目指して研究開発中の知的情報サービスでもたらされるライフスタイルのイメージビデオを紹介。パソコン、携帯電話、ICカード、カーナビゲーションシステムといったさまざまなツールで同じ情報を共有することにより、個人のニーズとTPOに合わせた、「いつでも、どこでも、誰でも」の技術と、「今だけ、ここだけ、あなただけ」のサービスが融合できると語った。
情報大航海プロジェクトは、新しい価値を生む次世代のインターネットサービスを意味する「V(バリュー)」、新たな社会インフラとしてのITサービスを表す「S(ソーシャル)」、プライバシーに配慮した未来型パーソナルサービスの「P(パーソナル)」の3つを柱に進めていくという。それぞれにモデルとなる実証事業を立ち上げると同時に、共通した技術の開発と普及を図る。
上記のPの実証事例として、ブログウォッチャーの代表取締役社長の羽野仁彦氏が登壇し、同社の「プロファイルパスポート」を紹介。これはブログやレビュー、個人サイトといった消費者からの発信情報を企業のマーケティングやコンテンツ、リコメンデーションに活かすもので、羽野氏は「今までのキーワード検索は単方向だったが、これからはより複合的なものになり、メディアは消費者から生産者に伝えるものへと変わる」と語った。
最後に再び登壇した小川氏は「ネットの世界は守るだけでなく攻めるもの。新しいネットの眼をつくることが必要だ」と、情報大航海プロジェクトの意義を強調。さらに、「ユーザーの視点でデザインし、オープンなプラットフォームをグローバルに共有する」という、情報大航海プロジェクトのビジョンを示して、講演を締めくくった。
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