9月21日、東京ゲームショウ2007に合わせる形で、幕張メッセに隣接するホテルニューオータニ幕張で「コ・フェスタ フォーラム in TGS 2007」が開催された。
コ・フェスタの正式名称は「JAPAN国際コンテンツフェスティバル」。日本のアニメやゲーム、マンガ、映画などのコンテンツ産業に関する一大フェスティバルとして東京と大阪を中心に開催される。今回の東京ゲームショウ2007もコ・フェスタの一環として実施され、今後ゲーム開発者向けのイベント「CEDEC 2007」、デジタル家電の展示会「CEATEC JAPAN 2007」などの既存イベントをコアとしながら進行していく。
コ・フェスタ フォーラム in TGS 2007は社団法人コンピュータエンタテインメント協会(CESA)と経済産業省との共催で、コンテンツ業界関係者を対象としたカンファレンス。マイクロソフトの「Xbox360」の今後の方向性やオンラインサービスの未来について話された「インターナショナルセッション」、さまざまなメディアミックスによりどのように収益機会を増やすかをクリエイターやプロデューサーに聞く「メディアミックスセッション」、そして世界で通用するエンターテインメントコンテンツを生み出す手法を各界で活躍するキーパーソンに聞く「エンターテインメントグローバルミーティング」の3部があり、それぞれ活発な議論が行われた。
「メディアミックスセッション」では、ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント テレビ部門日本代表 兼 アニマックスブロードキャスト・ジャパン代表取締役社長の滝山雅夫氏、セガ R&Dクリエイティブオフィサー CS開発統括部副統括部長 兼 NEソフト研究開発部長の名越稔洋氏、小学館キャラクター事業センター・センター長の久保雅一氏の3名が講演した。
滝山氏はまず、47の国と地域で14言語、4100万世帯に向けてアニメを配信している専門アニメチャンネル「ANIMAX」の位置づけを説明。また、米国テレビ業界における制作と放送の分業から垂直統合へ至る道のりが解説された。こうした上で日本と米国でのコンテンツの考え方には権利処理において大きな違いが見られることが語られた。
米国では制作プロデューサーがすべての権利を掌握しているため、権利処理が簡単に済む一方、日本では映像の作り手はあくまでテレビ局。制作した際の権利処理は初回放送分に限定され、専門チャンネルでの再放送や再パッケージングにおいてはこうした権利処理を最初から行う必要があり、非常に敷居が高くなっているとの説明があった。
こうした中、日本のアニメは上述したテレビ業界のコンテンツ制作過程とはかなり違ったコスト構造を持っているという。30分のアニメを1話作るのに1000〜2000万円の費用が発生するが、このコストは他のテレビ番組と違い、広告費などではまかないきれないため、DVD化や番組の外販などに備え米国並みに権利処理が容易にされていることが説明された。また、世界的に見ても子供向け番組が放送される時間帯の広告単価は低い傾向があり「どの局もアニメコンテンツを欲している」という。
これをふまえ、メディアミックスに対する心構えと必須条件を説明。特に先述した権利処理の柔軟さについて、「YouTube」や「ニコニコ動画」などの動画共有サイトについても触れ、現状では権利関係がクリアになってないとしながらも、セールスプロモーションとして有効なツールになりうるという見解を示した。
名越氏のセッションでは、まず倫理と審査の問題について大きくフォーカスが当てられた。「元々は玩具だった」ゲームというメディアにおいて、映画の5倍以上のスピードで表現手法が進化してきたことに触れ、「もはや玩具という幅では収まらなくなった」(名越氏)
同氏の代表的作品で、実写映画とのメディアミックスも行われた「龍が如く」を例に説明が行われた。龍が如くは日本のヤクザなどの裏社会や暴力を扱った作品であり、「倫理的な問題は社内でも当初から問題になっていた」。ただ、倫理審査は社内だけではなくCESAの関連団体であるコンピュータエンターテインメントレーティング機構(CERO)やゲーム機メーカーなどでも行われる。「下着はダメだが水着といえばOK」といったあいまいな、あるいは杓子定規な判断基準しか存在しない点が問題だと述べ、「急成長した分野であり明確なルールが存在していないのでは」という考えを述べた。
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