IPマルチキャスト放送の著作権処理の簡素化を目的とした著作権法改正法案が12月5日、衆議院で可決された。
今回の著作権法改正法案は、著作権の取り扱いについて、IP放送にも地上放送やCATV放送と同様の扱いを求めることを趣旨に、文化庁により今国会(第165回)に提出された。衆議院を通過した後、引き続き参議院で審議される。
改正の背景には“IPマルチキャスト放送”の開始が挙げられる。これは、総務省が2001年に制定した「電気通信役務利用放送法」により、電波障害地域など難視聴者に対する補完路として、ネット経由での地上波放送の再送信を認めたもの。2011年の地上放送のデジタル化への完全移行に向け、2006年12月にも開始が予定されている。
ところが、現行の著作権法における“放送”の区分は、地上波やCATVを通じて流れるコンテンツに規定される。ネット経由で配信される映像コンテンツは“通信”として明確に区分され、“放送”行為にはあたらない。しかし、両者には著作権処理上の扱いに違いがあり、法律上“放送”と認められないIP放送の場合、著作権許諾の際の手続きが煩雑になり、事業の円滑化に大きな制約を受けることになる。
具体的には、原作者や音楽家、実演者など多くの著作隣接権が認められる映像コンテンツにおいて、“放送”事業者の場合、包括的な契約などにより、著作隣接権については権利者の許諾が不要になる特権が認められている。一方、“通信”の場合には、コンテンツに含まれる権利者すべての許諾を求めなければならない。
改正法では、IP放送による地上波放送の同時再送信の円滑な実現のため、その際における著作権者に対する報酬請求権を有線放送と同様の扱いとすることを定めている。
今回の著作権法改正は、放送と通信の融合を目指す政策の一貫としても重要な意味を持つ。しかし一方で、IP放送に与えられる放送事業者としての特権の対象範囲が地上放送に限定されておらず、「電気通信役務利用放送法」で規定するIP放送の定義を越えた利用を認めた解釈も可能など、問題点を指摘する声もある。
また、“通信・放送”、および“著作権”に関する法体系において、IP放送に対する位置付けが双方で異なる点が浮き彫りとなり、多様化する社会に対して、これまで付け焼き刃的に改正が重ねられてきた著作権法そのものを抜本的に見直す必要性に迫られていると言える。
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