Advanced Micro Devices(AMD)が、Linuxプログラマーやユーザーとは協力した方が得策との結論に至った。これは、グラフィックスチップ大手3社の中で、Intelに次いでAMDが2社目となる。
AMDは米国時間9月6日、Intelに続き、オープンソースのドライバ開発を積極的な支援に乗り出した。このドライバソフトウェアによって、LinuxユーザーはATI製グラフィックスチップの高性能な3D機能をより容易に利用できるようになる。ATIはすでにLinux向けにプロプライエタリなグラフィックスドライバを提供しているが、この方法はエンジニアリングやサポートに関するさまざまな問題を伴う。そこで、AMDは、オープンソースのドライバ開発に資金を提供する時期だとの結論に至った。
AMDのグラフィックスプロダクツグループのソフトウェア担当バイスプレジデントであるBen Bar-Haim氏は、「このところ、デスクトップでわれわれの製品を活用することに関心が高まってきている。それも、必ずしもプロフェッショナルワークステーション市場に限らず、一般的なデスクトップでもこの動きが広がっている」とした上で、「そこで、われわれもその事業に参入し、(オープンソース)コミュニティーが優れたオープンソースソフトウェアを開発できるようにする必要があると感じた」と付け加えた。
このプロジェクトのプログラムマネージャー兼エンジニアリングリーダーを務めるJohn Bridgman氏によると、現在AMDは、NovellのSUSE Linuxプログラマーたちによるドライバ開発への資金提供、彼らとのハードウェアに関する詳細情報の共有、さらに彼らへの技術支援を行っているという。AMDは10日に同ドライバの初期版をリリースする予定。同社は、今後もプログラマーたちが2Dや3Dグラフィックスアクセラレーションなどの機能を追加し、徐々に同ドライバを拡張していく過程を支援する。
今回、ATIとAMDがオープンソースドライバの開発支援を開始したということは、両者にとって劇的な変化を意味する。従来、ATIは、オープンソースのLinux向けドライバの開発構想に対し冷めた見方をしていた。しかし、プロプライエタリドライバは純粋なオープンソース主義者たちにとって、単に受け入れがたいという問題だけでなく、ソフトウェアのアップデートなどサポートの提供に関する実際的な問題も突きつけている。このプロプライエタリドライバの問題は、Linuxに3D機能付きの派手なグラフィカルインターフェースを搭載しようという動きによって新たに注目を集めた。
Intelは、2006年にすでにLinux向けのオープンソースグラフィックスドライバの開発を開始している。しかし、ATIと同様にスタンドアロン(単独製品)のグラフィックスチップを主に販売しているNVIDIAは、依然としてプロプライエタリに固執している。ATIの動きについて、NVIDIAの関係者にコメントを求めたが、すぐに回答は得られなかった。
オープンソースドライバは、たとえ成熟したとしても、プロプライエタリドライバに完全に取って代わることはない。AMDも、コピー防止やデジタル著作権管理(DRM)といった知的財産権に関する懸念のある分野の詳細情報は、オープンソースプログラマーらと共有しない。また、それらの機能に対するサポートもプロプライエタリドライバ向けにしか提供しない。Bar-Haim氏によると、AMDは契約上、Blu-ray DiscやHD DVDの表示技術の詳細情報を公開しないことが義務付けられているという。
しかし、AMDは中身がまったく入っていないグラスよりも半分だけ入っているグラスの方が良いとの結論に至った。
Bridgman氏は、「過去にわれわれが抱えていた最大の問題は、ドライバ開発を可能にするために、われわれはハードウェアに関するすべての情報を公開する必要があるとの意見が寄せられた点だ」とし、さらに次のように続けた。「しかし、結局、最新のグラフィックスチップは十分に速度が速いため、知的財産権に関する大きな問題をさらさなくても、(オープンソース)コミュニティーが彼らのニーズを完全に満たすドライバを開発できるように支援することは可能だ」
こうした方針転換の理由の1つとして、AMDがATIを2006年に買収し、ATIが考えを改めたことが挙げられる。「AMDによる買収後、われわれが市場のより広いニーズに目を向けていることは間違いない」(Bar-Heim氏)
AMDによると、初期のドライバは、同社の「ATI Radeon X1000」と「ATI Radeon HD 2000」の2種類のグラフィックスチップをサポートするという。また、同社は、新製品を発売するたびに、オープンソースの取り組みを支援するために新たな詳細情報を公開していくという。
AMDは、プロプライエタリなグラフィックスドライバの開発も続ける。来週リリース予定の新版は性能が大幅に向上しており、HD 2000グラフィックスチップに対するサポートを拡大しているという。また10月のアップデートでは、AIGLXと呼ばれる3Dデスクトップグラフィックス技術のサポートも追加する予定。さらに、第4四半期にはプロフェッショナルワークステーションユーザー向けのバージョンをリリースする計画である。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したも のです。海外CNET Networksの記事へ
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