「学生たちは自分の投稿が他の学生に読まれるということを意識しながら書くため、それが別の動機付けにもつながっている。仲間に格好悪いところを見せないように向上意識を持ち、メディアの側面をもつ学問や研究に興味を抱くようになった」とKnauff氏は述べている。
教授の目からは見掛け倒しで中身がないと見られがちなマルチメディアやパーソナルコンテンツは、学生たちの気持ちを教育にひきつける点で効果を発揮している。Knauff氏は「学生たちが提供するコンテンツが教授や講師のそれより劣っているのは当然だ。コンテンツの作成においてその道の専門家に勝つのは無理。肝心なのはコンテンツの質うんぬんではない」と語る。
この風潮は、学士過程向けのアメリカ文学のクラスで定期刊行物を読む代わりにブログが使われるようになった以外にも広がっている。ダートマス大学のメディカルスクールの学生は、事例研究を著作、共有、批評する目的でウィキを利用している。
テンプル大学医学部の医師であり、臨床助教授を務めるMichael Barrett氏は、心音を録音したオーディオファイルを聞くことによって聴診技能が飛躍的に高まることを発見した。
Barrett氏が3月に米国心臓病学会で発表した研究によると、149人の医師が、通常の40%を大きく上回る80%の確率で心音を正しく識別できたという。Barrett氏は当初、CDで心音ファイルを配布していたが、学生からの提案に基づいてファイルを「iPod」にダウンロードできるようにした。
ドレクセル大学のeラーニングプログラムでアカデミックディレクターを務め、大学院向けの教育学のクラスで教鞭をとるKenneth Hartman氏は、主要TV局やラジオ局のコンテンツを検索できる「TVEyes.com」を使って、関連性のあるコンテンツが自動的に学生の手元に届くようにしている。
テキサスA&M大学では、画面をキャプチャして音声を重ねるかたちで動画を作成できるソフトウェアプログラム、「Camtasia」が一部の教授たちに採用されており、複雑な数学問題の解法を理解する助けとなっている。
「講義というかたちが万人にとって効果的な学習方法であるとは限らない。学生に何かを作らせると、彼らはそこから実に多くのことを学ぶ。つまりはそういうことだ」とKnauff氏は言う。
Web 2.0スタイルのツールが教育現場に登場したことで、教育理論にはじまり大学の構造にいたるまで、あらゆるものが変遷期を迎えることになるであろうという見方もある。大学や企業における学習動向を追っているForrester Researchのアナリスト、Claire Schooley氏は、伝統的な講義が廃れるであろうと分析している。
Schooley氏は次のように述べている。「学生がオンラインで講義の内容を既に読むか、動画を見るなどしてから、教授と双方向に対話するというスタイルが一般化しつつある。講堂を埋める300人の学生を相手に教授が講義する時代は終わった。今後は、参加者主体のワークショップスタイルに重点を絞って、大学の構造が様変わりしていくであろう」
新しいツールは学生の誠実さを保つ役割も果たす可能性がある。一部のツールではログイン情報の入力が要求され、グループ課題における各学生の参加状況を追跡できるようになっているとしたうえで、Hartman氏は次のように語る。
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