Web 2.0スタイルのツールが変革する大学の教育現場

文:Candace Lombardi(CNET News.com)
翻訳校正:株式会社アークコミュニケーションズ、大久保崇子、國分真人
2007年08月09日 20時16分

 私の大学生時代、周りの皆から煙たがられている女子学生が1人いた。ことあるごとに顔を突っ込みたがる彼女は、指定された本を読んだということをひけらかしたり、本題とは無関係のトピックを得意げに宣伝したりするだけのために、知的と言うには程遠い意見をクラスのメッセージボードに投稿していた。

 私自身も含め、ジェネレーションX世代に属する級友たちはこの女子学生のことを野暮ったいなどと見下している感があったが、どうやら彼女は単に時代を先取りしていただけのことらしい。

 今世紀に入って自己顕示欲の旺盛な新しい世代の若者が大学生になり、「ジェネレーションXのシニシズムは自己陶酔に取って代わられた」と教育専門家たちは分析している。大学は今、新入生を獲得したり、学生による知識拡大を促進したりするため、新しい技術を採り入れることによってこの動向をうまく利用しようと取り組んでいる。

 「自分の研究成果や意見を自慢したい学生が多い。彼らが好むのは、自分に関心を持ってもらってよく見てもらうことだ」と、ダートマス大学のシニアインストラクショナルテクノロジスト、Barbara Knauff氏は述べている。

 他の教育専門家たちの意見もKnauff氏と同じだ。Web 2.0スタイルのソーシャルツール(ブログやウィキなど)は、導入すると知名度を高められ、学問に対する学生の興味を高めて他の大学との差別化を図るための格好の手段としてとらえられている。

 シートンホール大学では、正式に入学する前の学生をひきつけるためにもソーシャルツールが利用されている。同大学のサイト実装を手がけた教育ソフトウェアベンダーBlackboardでクライアントエンゲージメント担当シニアディレクターを務めるJan Day氏によると、新入生の手元には合格通知書類とともにログイン情報が郵送されるという。

 Day氏は次のように述べている。「何人もの受験生を不合格にしたからには、合格者のうち一定の割合の学生には入学してもらわないと困る。このことは、高等教育機関が抱える難点の1つだ」

 ソーシャルネットワーキング環境では、新入生向けオリエンテーションを受けるかなり前に学生が大学に慣れ親しむことができるとDay氏は言う。合格者は、入学を決める前からルームメートとメールで連絡したり、友達をつくったり、キャンパス内で学生に人気のスポットを把握したりできるのだ。

 一部の大学では、教授陣の紹介に動画ダウンロード機能を利用している。

 テキサスA&M大学のアシスタントディレクターであるRhonda Bkackburn氏は、Appleの「iTunes U」のことを、貴重なコンテンツが自由に配布されることを懸念する教授からは懐疑的に受け止められているものの、効果的なパブリックリレーションズツールであると評している。教授たちは、自分自身や研究内容、講義について紹介した動画を投稿するためにiTunes Uを活用している。

 合格者が実際に大学に入学した後も、ソーシャルネットワーキングツールの活躍は続く。コンテンツを学生に一方的に押し付けるだけの講義はもはや過去のものとなりつつある。教授や講師たちは今、講義内容を配信してオンラインという教室から離れた場所での知的な討論や研究を促し、より深く掘り下げた討論のために教室での時間を充てるようにしている。

 Knauff氏によると、学生が教授に受けのよいテーマを繰り返し取り上げるのではなく、独創的な考えを展開できるようになるという意味で、セルフパブリッシングツールは魅力的である。この種のツールを利用する学生たちは、学術記事やオーディオファイル、動画を集めたリポジトリや用語集の作成に共同で取り組んでいる。

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