PayCycleとの関わりに見るベンチャービジネスの醍醐味

文:David Hornik 翻訳校正:株式会社アークコミュニケーションズ、平本尚美2007年06月28日 08時00分

 私は自分が投資した企業に関することはあまりVentureBlogに書きすぎないよう心がけている。ここで私がよく取り上げるのは、テクノロジやベンチャービジネスに関する、もっと間口の広いテーマだ。とは言え、私が自分のポートフォリオ企業についてまったく書かないというわけではない。ただ、実際のところ、そうした企業についてはVentureBlogよりもVentureCastで紹介することのほうが多い。したがって、このVentureBlogでは、おおむねハイレベルな内容を保っているのではないかと思う。そんなわけで、たまには私のポートフォリオ企業の1社であるPayCycleについて書いてみたい。

 つい最近開かれたPayCycleの取締役会で、私も含めた役員一同は、同社の顧客企業数がついに5万件を突破したことを祝った。小規模企業を対象とするアプリケーションサービスプロバイダー(ASP)が1社で5万件もの顧客を獲得するというのは、大変な快挙である。おそらくSalesForceでも、その5万件目の顧客と正式に契約を結ぶときに、さぞかし盛大な祝賀会を開くのではないだろうか(ちなみに、2007年1月31日の時点でのSalesForceの顧客数は2万9800件だった)。これほど途方もない記録の達成を目の当たりにして、私は自分のポートフォリオ企業に関するここ最近の胸躍るような出来事の数々に思いを馳せた。そこで、VentureBlogでは、これを書こうと決心したのである。私は今後もテクノロジやビジネスの分野で、より広範なテーマを取り上げてゆくつもりだが、それと同時に、August Capitalのポートフォリオ企業で尽力している人々のことも大いに称賛しようと思っている。昼夜の別なく驚異的な進展をものにし続けている彼らは、そうした称賛を受けるに値する人々だ。

 私がPayCycleの創業者たちと初めて顔を合わせたとき、彼らは傑出したアイデアと製品のデモ版、そして申し分のない信用証明書を持っていた。しかし、顧客企業はただの1件もなかった。実のところ彼らは、機能するサービス体制すら備えていない有様だった。彼らのアイデアというのは、顧客となる小規模企業にとって最も安価で、しかも最高の機能を備えた、セルフサービスの給与計算管理ソリューションを確立するというものだ。小規模企業の経営者がボタンを1つクリックするだけで、従業員の給与の支払い、連邦税と州税の納付が完了し、決算報告書の作成や「QuickBooks」へのデータのエクスポートなど、あらゆる処理ができるという。彼らの構想は実に説得力があった。しかし、私が投資を決めたのは彼らのアイデアに説得力があったからではなく、経営陣が素晴らしかったからである。

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