さらに、団塊世代が旅行商品を選ぶ際の価値基準を探った。対立する2つの項目から自分の考えに近い方を選んでもらい、ウェイト値で表したのが図4である。「目的やテーマを決めていく」派が多いという特徴が出たが、だからといって「目的やテーマのためなら費用は惜しまない」人は少数派であった。目的のために費用を惜しみなく使うというよりも、幅広い旅行会社の商品を比較・検討してじっくり選び、お得に何度も行きたい、というのが全体的な傾向として読み取れる。金銭的に余裕があると考えられがちな団塊世代だが、1回あたりの国内旅行に対する財布のヒモは意外に堅いようだ。
ただし、この結果を国内旅行に行く頻度別に集計すると、旅行頻度が高いほど「求める目的のためなら費用は惜しまない」人の割合が高くなる傾向が見られた。「毎月1回以上」行く人では割合が逆転して「費用は惜しまない」派が過半数を占めている。国内旅行にかける平均費用を尋ねる質問でも、旅行頻度が高い層ほど、平均費用も高い傾向が出ており、旅行に行く頻度もかける金額も多く、「目的のためなら費用は惜しまない」というこだわりのある層の存在が浮かび上がった。
JR各社や航空会社の一部は熟年層対象の割引サービスやポイントサービスを提供して熟年層の囲い込みを始めている。たとえば、JR東日本の「大人の休日倶楽部」など、JR各社の会員制サービスについて、利用状況・利用意向を尋ねたところ、利用者と今後利用したい人の合計は実に75%以上となった。同サービスは有料(年会費1500円〜2500円)のサービスであるが、「有料の年会費を払ってでも利用したい」という商品性は、堅い財布のヒモを緩めるためのヒントになるのかもしれない。国内旅行においても、ポイントサービスや熟年層限定割引サービスなどの導入が突破口になるのではないか。
薄利多売と言われる旅行業界。旅行需要の牽引役になるかと期待される団塊世代も、全体的には商品を選ぶ目は厳しく、財布のヒモは意外に堅いという結果となった。今後は、「求める目的のためなら費用を惜しまない」層をどれだけ取り込んでいけるか、また、熟年層限定割引のようなプレミアム性を持たせたサービスによりリピート率をどれだけ上げていけるかが、鍵と言えるかもしれない。
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