ウィジェットをめぐる経済システム - (page 3)

文:David Hornik 翻訳校正:株式会社アークコミュニケーションズ、平本尚美2007年05月24日 15時21分

 この発展し続けるウィジェットの経済システムには、もう1つの難題がある。業績好調ないくつものウィジェット企業によって大規模なディストリビューションが実現したことで(コンシューマーはRockYouとSlideの両方で毎日20万個を超すウィジェットを新規に作成しており、その結果、1日に膨大な数のページが閲覧されている)、複数の新興サービスプロバイダーがウィジェットアグリゲーターとしての展開を画策し始めた。SplashCastMagnify.netMixerCastといった企業は、コンシューマーやコンテンツ製作者が1つのサービス内で複数の異なるウィジェットサービスを組み合わせて使用できる、統合型サービスの提供に取り組んでいる。これを利用すると、たとえばYouTubeやPhotobucketなどからの動画を流す動画チャネルを作成したり、FlickrやSlideなどから写真を取り込んで表示したり、「MixerCast」や「SplashCast」の場合と同様、サードパーティーのソースをいくつでも自由に使って、異なる複数のメディアフォーマット(動画、写真、音楽)を組み合わせたりすることができる。それによって生まれるのは、他のさまざまなウィジェットプロバイダーのコンテンツ(だけでなく、このような統合機能を提供するサービス独自のコンテンツも使えるだろう)が主体的に編成、制御されたサービスだ。こうしたウィジェットアグリゲーターが直面するのも、やはり一種の収益化の問題である。彼らのサービスがMySpaceや「Bebo」のような主要デスティネーションサイトに成長した場合、必然的に降りかかる経済的な宿命に対処せざるを得なくなるからだ。しかし、そのために彼らが推進する戦略とは、どうやら自分たちの提供する統合サービスを、ウィジェットが追随しているのと同じホスト(圧倒的な覇者はもちろんMySpaceだ)に埋め込むことのようだ。ということは、ユーザーは自分のMySpaceページにウィジェットを埋め込むかわりに、複数のウィジェットで構成したウィジェットを埋め込むことになるわけだ。支配的な立場のホストと単独のウィジェットプロバイダーとの間に生じる経済システムをうまく調整するのが難しいとしたら、ホスト、アグリゲーター、そしてそのアグリゲーターのサービスに統合される流動的な数のウィジェットプロバイダーが関与する経済システムでは、どれほど調整が難しいか想像してみてほしい。

 このようにさまざまな難題はあるものの、ウィジェットをめぐる経済システムに対する私の見方はきわめて楽観的だ。ウィジェットとホストの関係のうち圧倒的多数は、実に共生的なものだと私は確信している。膨大な数のコンシューマーが楽しんでいるすばらしいサービスは、サードパーティーのウィジェット企業が開発する別の優れたサービスによって、いっそう充実したものになるからだ。収益につながらなくとも、こうしたウィジェットはホストにとって歓迎すべき贈り物だ。ウィジェットが組み込まれることで、より多くのコンシューマーを獲得でき、彼らを魅了するサービスがいっそう向上し、しかもそのためのコストをホスト側が負担することもない。したがって、ウィジェットをめぐる経済的な仕組みを今後数カ月から数年の間にうまく整理できるかどうかは、ホストおよびウィジェット企業にかかっている。私は、この懸案事項は2007年中に大きく進展するだろうと見込んでいるし、その新たな展開に一役買うのを楽しみにしながら、今後もさまざまなホストやウィジェットサービス、コンテンツアグリゲーターなどの企業に投資してゆくつもりだ。

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