ウィジェットをめぐる経済システム - (page 2)

文:David Hornik 翻訳校正:株式会社アークコミュニケーションズ、平本尚美2007年05月24日 15時21分

 この状況は、今まさにウィジェットの世界で難解なバレエダンスが繰り広げられているようだ。そして、ホストとウィジェットのスターダンサーらによるこのバレエの第一幕は、どうやらMySpaceがトップダンサーとして舞台を一巡りした後、Photobucketを獲得したことで幕が閉じる様相を呈してきた。MySpaceとPhotobucketは、今では洗練された技をもつバレエ団になったように見えるが、これまでは必ずしもそうではなかった。ほんの数週間前には、Photobucketが商標入りのスライドショーを提供するという手法で、MySpace上のトラフィックを収益化する能力を行使しようとした。これに対するMySpaceの反応は、Photobucketとの共演を完全に拒否するというもので、MySpaceを利用する1500万人のPhotobucketユーザーをすべて締め出してしまった。この出来事では、一体PhotobucketとMySpaceのどちらが多くの損害を被ったか、という疑問が残る。MySpaceにとってPhotobucketとの関係は、自社側のユーザーの反感を買うことなく一方的に関係を断てるような、ひたすら寄生されるばかりのものだったのだろうか。あるいは、PhotobucketのスライドショーをMySpaceサービスから排除するという苦肉の策によって、PhotobucketとMySpaceの双方が痛手を被った、共生的な関係だったのだろうか。傍観者から見ると、今回の一件で両者は互いの関係を、当初MySpaceが望んでいたであろう関係よりもはるかに共生的だったと判断したように思える。だからこそMySpaceはPhotobucketを買収して、双方のサービスのユーザーエクスペリエンスを向上させ、自社サイトのトラフィックの収益化を高めようとしているのではないだろうか。この結末は、どうやら両者にメリットをもたらしそうだ。

 大多数のウィジェット企業は、ウィジェットの配布が1番大事で収益化は二の次、という戦略をとっているが、少数ながら業界の最前線でこの勢力均衡を打破しようとしている企業もある。その中で最も傑出した企業が、私の投資しているVideoEggだ。先に無数の「VideoEgg」動画をホストサイトに組み込んでしまってから収益化についての交渉に入るという手順は踏まず、VideoEggは初期の段階でホストサイトと収益的な関係を確立した。それは、パートナーが提供するいずれかのサービスを利用して動画で収益を上げた場合に、その収益を双方で分かち合う方法によるものだ。その結果、ホストサイトは喜んで自社サービス上で動画の普及促進に励んでくれるので、今やVideoEggはさまざまなホストサービスに毎月5億本を上回る動画を供給して収益を上げられるようになった(しかも、VideoEggのトラフィックが急速に増大し続けているのに比例して、収益を分配する機会も月を追うごとに増加している)。そればかりではない。ソーシャルネットワーク、コミュニティーサイト、情報サービスなどはいずれも、従来のように意気消沈するほど膨大なリソースをつぎこんで独自の動画サービスを作り出す必要がなくなった。しかも彼らは、VideoEggのめざましい躍進とホスト収入を活用して、実現しうる最高水準の動画サービスを自社のエンドユーザーに提供できるようになったのである。こうした事例もまた、両者にメリットをもたらす関係の1つではないだろうか。おそらく、いずれはMySpaceを始めとするコミュニティーサイトも、写真共有ホスト、アバターサービスの提供企業、ショートメッセージサービス(SMS)プロバイダーなどとの間で、同様の協定を結ぶようになるはずだ。

 このVideoEgg手法の明らかな強みは、長い道のりではあるが、チャネルコンフリクトを最小限にとどめるのに有効だということだ。今日のオンラインメディアにおいては、特性を限定できる多数の視聴者がいることで、確実に広告主を誘致できるという共通認識がある。これは一般論としては正しいと私も思うが、ことウィジェットに関しては、それが広告用チャネルとして適切なものかどうかを広告主が見極めるのはなかなか難しい。たとえば、広告主がMySpaceで販路を獲得するには、広告をMySpaceに直接出すべきなのか、あるいは「RockYou」や「Slide」に出すべきなのか。あるサイトの広告枠の供給元が明らかであれば、メディアバイヤーはほとんど苦もなくその広告枠を仕入れることができる。したがって、もし同一のサービス上で複数のサードパーティーが広告主に広告枠を販売する場合、それぞれのパーティーが販売を成立させるのは相当に難しくなる。そのため、大規模なソーシャルネットワークにとっては、サイト上で複数のサードパーティーに「受容できない」広告枠の販売活動をされた場合、そのチャネルコンフリクトが悩みの種となる。そして必然的に、ソーシャルネットワークが独自のサービス上の広告枠を販売する仕事はもっと難しくなり、保有する広告枠の価値も低下してしまう。したがって、たとえそうしたホストサービスが、ウィジェットプロバイダーをおおむね共生的だと見なしていたとしても、結果的に必ずチャネルコンフリクトが生じるとなれば、それらのウィジェット上にサードパーティーが広告を掲載するのは容認しがたいと考えるだろう。

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