カリフォルニア州マウンテンビュー発--IBMは、コンピュータを作った企業だというイメージから脱却したいと考えている。同社が知ってほしいのは、ニューヨーク市警のデータベースをカスタマイズして犯罪者を迅速に検索可能にする、ジェノグラフィック研究(人類の移動の軌跡を遺伝学的にたどるプロジェクト)向けのDNAデータベースを作成する、National Football League(NFL)のタッチダウンシーンをコンピュータ画面に表示する仕組み作りといった取り組みだ。
IBMでデジタルメディアとブランド関連エンターテインメント部門を担当するグローバルプログラムマネージャーのRichard Toranzo氏が米国時間5月15日、Googleの「BtoB Emerging Media and Integrated Marketing Summit」で語ったところによると、IBMは現在、ハードウェアメーカーからサービスやソフトウェアを提供する企業へとブランドイメージを転換するため、ハリウッド的な手法を活用しているという。
IBMでは、パイロットプログラムの一環として、テレビとウェブ向けに、同社の技術や社員が世の中に及ぼしている影響を説明する動画を十数本制作した。
Toranzo氏は講演後のインタビューで「実際にあなたやわたしの生活に関わる企業として、IBMのブランドを再定義したい。もっと若く、クールで、ファンキーでありたいと思っている」と語った。
IBM以外では、化学メーカーのDuPontも、企業ブランドを向上させるためにオンライン動画の力を借りようとしている。同社がこうした動画で対象とするのは、身の回りにあるスポーツウェアの多くで利用されているナイロンや「Lycra」といった化学繊維を開発したメーカーが、実はDuPontだということを考えもしないような、比較的若い層の視聴者だ。
DuPontでは、3月に3週間にわたる試験的なマーケティングプログラムを実施し、オンラインビデオキャスターであるAmanda Congdon氏の司会で、「Boing Boing」「digg」「Google Video」および科学系ブログといったサイトに2分間のビデオ広告を流した。この広告の目的は、DuPontの科学分野への貢献を取り上げた口コミメッセージを生み出す点にあったと、同社の電子および通信技術部門でEビジネスリーダーを務めるGary Spangler氏は説明する
ビデオ広告では防火服の「Nomex」、保護ガラスの「Kevlar」、自動車塗装の「Hot Hues」など、DuPont製品の利点や科学的背景が説明された。Spangler氏によると、この広告からDuPontのウェブサイトへの訪問数は約6000件を数え、100以上のウェブサイトからDuPontのサイトへリンクが張られた。また「複数のサイト」がこのビデオ広告を自主的に埋め込み表示したほか、「今日のベストサイト」に選ばれた広告もあったという。「ブログを通じて、わかりやすいかたちでコミュニケーションを取れることを学んだ」とSpangler氏は話している。
講演のあとで、Spangler氏は「メッセージは多くの人が集まるところに届ける必要があるが、若い人たちが集まるのはネット上だ。BtoB企業や、特に(最終製品を作るための原材料を提供する)材料企業にとってこれは良い知らせだ。というのも、そうした企業の場合、ブランドが知られてないからだ」と語った。
一方、IBMのToranzo氏は、同社の場合は、さらに一歩進んで、ブランドを使ったエンターテインメント番組の制作にも取り組んでいると話した。NFL、PGAツアー、さらにはNational Geographic協会と組んだジェノグラフィック研究プロジェクトなどを扱ったミニドキュメンタリーに加え、IBMが選んだ企業の最高経営責任者(CEO)800人に対する調査を基に作られた、ビジネスにおけるイノベーションをテーマとする3分間の番組を、CNBCが放映している。コンテンツの制作はCNBCが行い、IBMは番組の広告枠を購入した。この番組の司会はニュースキャスターのMaria Bartiromo氏が務め、Def Jam Recordsの創業者であるRussell Simmons氏、伝説的なスケートボーダーのTony Hawk氏、MTV幹部などとのインタビューが放映された。
このミニ番組の成果について、Toranzo氏は「IBMのブランドが、通常は一緒に取り上げられないような革新的な企業と結びついた。あるトピックを取り上げ、それをめぐる話題を生むことで、今後の方向を示す存在になれる」と話している。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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