Web 2.0時代における展示会の意義とは--世界最大の展示会「CeBIT」運営者に聞く

インタビュー:永井美智子(編集部)
文:加藤さこ
2007年05月10日 07時00分

 3月15日から21日まで、ドイツのハノーバーで世界最大のデジタルテクノロジ展示会として知られる「CeBIT 2007」が開催された。2007年のCeBITの総来場者数は前年より10%以上多い48万人、ドイツ以外からの出展者数は3344社と過去最高の規模となり、開催されたセミナー数はCeBIT史上最大となる1000以上になった。

 CeBITは来場者数で比較すると、日本で開催されるデジタル関連の展示会「CEATEC」の約2.5倍、米国「CES」の約5倍の規模を誇る。ここで見られるトレンドは、今後のIT業界の世界的な流れを映し出しているといっていいだろう。今回の展示会を通して浮き彫りになったIT業界の動向と、インターネット時代にリアルの展示会が持つ役目について、CeBITを運営するドイツ産業見本市 取締役社長のエルンスト・ラウエ氏に聞いた。

――2007年のCeBITは昨年に増して非常に盛況だったと聞いています。

 世界各国からの来場者数は2006年を上回り、企業の意思決定権を持つ人々が集まりました。来場者の80%がビジネスを目的としており、110億ユーロ(邦貨換算で1兆7000億円)という金額の商談がまとまりました。

 IT業界が進化するなかで、CeBIT自体も変化しています。1970年代のIT業界はハードウェアが中心でした。その後1980年代はソフトウェア、1990年代から2000年代はテレコミュニケーションの時代へと進化してきています。その次に来るのは、いわゆるWeb 2.0のアプリケーションやコンテンツなどでしょう。

 企業のブースの大きさにも変化が見られます。たとえば、1970年代はハードウェア関連企業がかなりのスペースを取ってプレゼンテーションをしていました。その後ソフトウェアの会社がかなりの部分を占めるようになり、また別の新しい会社がより大きなスペースを占めるというように変わっています。

――Web 2.0関連企業で2007年に大きなブースを出していた企業はありましたか。

 ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)運営会社のXING.COMなどがありましたね。

 Web 2.0の世界では、インターネットを使って同じ関心を持つ人たちが集まり、より効率的に情報を交換し、その中でパートナーを見出すことが可能です。将来的には、まずオンラインで人と人が出会い、CeBITで実際に対面をしてビジネスの話をするようになる可能性もあります。

――これまでIT業界の中心だったハードウェアやソフトウェアは、その場に行かなければ商品を手に取って見ることができないという点で、展示会の意味も大きかったように思います。しかしインターネットサービスが中心になると、わざわざ展示会に行かなくてもPCを使ってサービスを体験できてしまう状況になりますね。そうなれば展示会の意味はあまりなくなってしまうのではないでしょうか。

 たしかに1990年代後半のインターネットバブルの頃、我々は展示会が今後どうなるかのと懸念しました。インターネット上でバーチャル展示会の開催を試みたのですが、何百万というドイツマルクを投資したにもかかわらず、あまり芳しい結果は得られませんでした。

 インターネット上ではさまざまな情報を得ることができます。しかし、信頼関係を築くことは難しい面があります。業界に革新を起こすためには、製品、サービスなど、さまざまなものが組み合わさる必要があります。いろいろな業界が融合することで初めて新しいビジネスが生まれる。しかしこのプロセスをインターネットだけで起こすことは非常に難しいのです。

 インターネット上でもプレゼンテーションはできます。ただ、そこでは背後にあるものが見えません。その企業でどういう人が働いていて、どういう人がトップなのか。それはインターネットではわかりませんね。展示会では、実際に製品やサービスを担当している人と会ったり、いろんな考え方に触れたりすることができます。

 CeBITはビジネスイベントなんです。適切な人が集まり、適切な人と出会う。来場者の80%がビジネスを目的に来ている。これはとても大きな意味のあることです。ビジネスをしたくて、またはパートナーを見つけたくて、そしてソリューションを見出したくてCeBITに来ている。

 たとえばソニー、シャープ、松下電器産業などの日本の企業は、CeBITで4万人ほどのディーラーに会えます。欧州市場に参入するにはディーラーを通すことが避けて通れません。CeBITはエンドユーザーとの出会いの場ではなく、ビジネス相手との出会いの場であると言えます。

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