ラリー・サンガー氏が語る--今のWikipedia、未来のCitizendium

文:Neha Tiwari(CNET News.com) 翻訳校正:編集部2007年04月25日 08時00分

 Larry Sanger氏は無料のオンライン百科事典Wikipediaの共同創立者であり、Wikipediaで賃金をもらう最初の編集者だった。

 Sanger氏は最近、オンライン研究の分野では世界には彼の過去の事業よりもよいものが必要であると感じている。2007年4月に始まった新しいプロジェクトであるCitizendiumは、wikiへの匿名の投稿を廃止し、投稿の編集を行う専門家を活用するなど、厳密な査読手順を実施している。

 Wikipediaには4億人以上の登録ユーザーがおり、250の言語で提供されている。英語だけでも、記事の数は200万件近くにものぼる。Sanger氏は2003年初めにWikipediaから離れたが、信頼できるWikiベースのフォーラムを作る貢献を続けていた。Sanger氏はCNET News.comの取材に答え、新会社でWikipediaと戦っていく計画や、いかにオンラインで情報を探す方法を変えていくかについて話した。

――あなたはWikipediaの共同創立者としてよく知られています。Wikipediaを離れる選択をしたのは何故ですか。

 あれからしばらく経ちますが、私が離れたのには2つの理由がありました。1つは、私が解雇されたということです。WikipediaとNupediaを創立した会社は、景気の低迷に伴い、私への支払い能力をなくしていました。しかしその後、私は自分自身でプロジェクトから距離を置いていました。これは基本的にプロジェクトマネージャーがトラブルメーカーたちを抑えることに前向きではなかったからであり、エキスパートが求められる役割もなかったからでもあります。それが私が2003年の初め頃、(Wikipediaの共同創立者である)Jimmy Walesに、なぜ私がプロジェクトを永遠に離れることになったのかの説明の中で述べたことです。

――違う考え方をもつようになったということですが、今のCitizendiumで、Wikipedia以上の何かをできると思ってるわけですね。

 そうですね、私は確かに、高品質で無料の百科事典がどんな風にあるべきかということについては違う意見を持っています。Citizendiumは手始めとして、Wikipediaに対するよりよい競争相手を狙いますが、それだけで満足するつもりはありません。われわれは多くの異なる種類の信頼できる情報を集約しようとしています。また、われわれはすでにパートナーになってくれる可能性のある他の人たちと、それをどう実現するかについて話しています。このように、われわれは単にWikipediaよりもうまくやろうということよりも、大きな志を持っています。

――Wikipediaは非常に大きく成長しました。どうやって競争していくのでしょうか。あなたは本当に、wikiがもう1つ必要だと思いますか?

 私は絶対にもう1つwikiが必要だと考えています。残念ながら、そもそもWikipediaが単純に信頼性に欠けているという理由からです。よく言われるように、少なくとも一部のテーマにおいては、Wikipediaは(調べ物をするうえでの)いいスタート地点となります。しかし、それは信頼できる参考資料という役割を期待してではありません。そして正直なところ、私がWikipediaを本当に信頼できるものに変えるために必要だと思っていることに対して、Wikipediaコミュニティが準備ができているとは思えません。

 もう1つの質問ですが、どうすればわれわれは競争できるでしょうか。私は単純に私たちが数十万の記事を作り上げるまでに数年かかるであろうと考えていますし、われわれはWikipediaそのものが成長したのと同じように成長するだろうと考えています。明らかに、しばらくは競争になどならないでしょうが、数年間待ってもらえれば、広く読まれる見出しのほとんどについては同じくらい便利なものになるはずです。もちろん、われわれの情報の方が信頼できるものになるはずですから、実際にはより便利なものになるはずです。

――Citizendiumには、「専門家(experts)」や「見回り(constables)」がいます。その専門家はどこから来るのですか。彼らが信用できるということはどうして分かるのでしょう。

 専門家はわれわれの行った報道発表の結果、向こうからやってきてくれた人たちです。われわれは募集も若干行いましたが、ほとんどは向こうから来てくれた人で、相当数います。Wikipediaに不満を持っており、そちらを離れて加わってくれた人も多くいます。

 質問の後半についてですが、専門家の信頼性自体について、世間には多くの見方がありますね。私自身も、発言している人が博士号を持っているからというだけの理由で、その人が誰かについてメチャクチャなことを言うのを信じたりはしません。しかし、私は何らかの、信用の印を誰かが持っていれば、それはその人がその特定の項目について普通以上の知識を持っている証拠だと考えています。こういった信用の印は、なにも学位とは限りません。ここでの問題は社会的に専門家だといわれている人が、本当に信用できるか、あるいは頼りになるかということです。これはわれわれ一人一人が自分で答えを出すべき問題だと思います。もしこれが、私自身がどういう人のウェブを信用するのかという話であれば、私はそのテーマの専門書を1冊読んだことがあるという人よりも、そのことについて調べることをライフワークにしている人を信じるでしょう。

――Citizendumの読み手としては、Wikipediaが狙っているよりも年上で、より成熟した人たちを狙っているのですか。

 これはwikiですから本当は狙いを語ること自体が無理なのですが、わたしがそもそも何を狙っているかというと、Citizendumのトピックをなるべくオープンで包括的なものにしておきたいと思っています。こんなことを言うとちょっと驚かれるかも知れませんね。テレビゲームやファン小説にのめり込んでいる人たち、あれだけの記事があるのにWikipediaが物笑いの種にされていることに関心がある人たちについては、諸手を挙げて歓迎します。個人的には、それが市民による要約(citizens' compendium)であり、われわれは全てのことについて多くの情報を必要としています。大きな問題は、異なる話題についての大量の(かつ網羅的)記事を維持できるのかということです。例えば、私はスタートレックファンを排除するつもりはありません。しかし私が座って募集について考えるときには、これまでのところその時間はあまりなかったのですが、私はまず学問的なところを追求します。

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