MSNとWindows Liveの舵を取るメディア通の手腕 - (page 2)

別井貴志(編集部) 松島拡2007年04月10日 08時00分
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――まだよく理解していないユーザーも多いと思いますが、MSNとWindows Liveのブランドの違いは。

2005年11月にサンフランシスコで初めてWindows Live戦略が発表されて以来、マイクロソフトは「User In Control」という基本戦略を掲げてきました。

 全世界には何千億というウェブページがあり、これを利用するインターネットユーザーが何千万人もいて、こうした状況で情報はあふれ、どの情報をどのように選択したらよいかわからなくなっている人たちも多く、そういう人たちにベストなかたちで情報をコントロールできる仕組みを提供する思想や姿勢を表した言葉です。

 それを、簡単に具現すると、ポータルとしてのエントリーポイントはMSN、Windows Liveという2つを両立させたほうがいいと判断しました。MSNはネット利用者の大半の人たちであり、比較的受動的に利用している一般ユーザーに向けて、あらかじめ最適に編集したかたちの見せ方やメニューで提供するポータル、Liveは積極的にインターネットを利用するユーザーに向けて、自分が使いやすいようにフルカスタマイズやパーソナライズをしたいと考えている人たちに提供するポータルと位置づけています。

 今はまだ「アカデミー賞特集」のような実証例を積み上げていくことで、MSNとWindows Liveにブランドを分けたことの意味をユーザーに浸透させている段階ですが、「すべてのPCにWindowsを」というのと同様に、Windows Liveも「すべてのインターネットユーザーにWindows Liveを」という理念を掲げています。もちろん、そんなことは現実にはあり得ませんが、MSNとWindows Liveにブランドを分けたことで、ユーザーの間口が広がったのは確実です。MSNとWindows Liveが、互いに成長した上でかけ算になったとき、初めてMSのオンラインサービス事業は、大きな市場を取れるだろうと思います。

――確かに、ブランド構築の面では、Live Searchと連動したブログパーツ「Carol」や、特設サイト「らいぶ寿司」など、今までのMSにはなかった部分を感じますね。ところで、検索連動型広告「adCenter」は、2007年に日本でも稼働しますか。

 なるべく早い時期に導入したいと考えています。インターネットの広告市場は4000億円規模に急成長していますが、先程も述べた通り、その多くは販売促進の広告メディアとしてインターネットを使う、というものです。

 しかし、6兆円といわれる広告市場全体の中で、インターネット広告がさらに伸びるには、ブランディングの部分が欠かせません。MSNやWindows Liveを活用して、その方法を提案するのが今年の課題ですね。私の役割は、各事業部の持っている資産をどう有効活用するか、という点にありますが、Windows、Microsoft office、Xbox、それぞれに最適な広告配信の仕方や、安定したネットワークを作っていくには、慎重な配慮が必要です。下手をすれば、これまで築いてきた各ブランドを傷付けてしまう危険性もありますからね。

――今やゲームは“第5のメディア”とも呼ばれ、ゲーム内広告の重要性も高まってきています。MSが2006年5月にゲーム内広告企業のMassiveをいち早く買収したのも、こうした状況を予測してのことだったのでしょうか。

 もちろん、その可能性を感じていたからこそ、MSはゲーム内広告事業に投資したのだと思います。これまでのMSには、どちらかというとビジネス向けのブランドイメージがあります。しかし、2006年にスティーブ・バルマーCEOが発表したLive戦略にもあった通り、MSNやXboxを介して、今まで取り込めていなかったエンドユーザーとの接点を作り、巨大な広告市場で技術や資産を活用していく、というのは重要な課題です。その意味で、樋口泰行のCOO就任や、儲俊祥(Sean Chu)のエグゼクティブプロデューサー就任も、エンドユーザー向けのブランド構築の一環なのです。

 確かに、MSという船はあまりに巨大なため、その動きは非常にゆっくりとしたものに見えるでしょう。しかし、その動力は非常に大きく、一度航路が決まったら、その後は一気に進んでいく。私も、微力ながらその動力の一つになりたいと思っています。

――動画共有サービスSoapboxについて思うところは?

 自分としては一番やりたい分野ですが、YouTubeとは一線を画さなくてはいけない、と思っています。これまでソフトウェア会社として違法コピー禁止を謳ってきた上に、企業として社会に対する責任もありますから、YouTubeやGoogleのように権利の問題に対し無責任ではいられません。

――そうですね。しかし、テクノロジーやプラットフォームはあるのに提供できない歯がゆさというのは……。

 インターネットのおかげ、あるいはそのせいで、コミュニケーションの仕方や人とのつながり方、あるいはビジネスモデルなど、様々なものが変化しました。例えばリクルートは、それまで書店で情報誌を販売していましたが、今は情報誌という形は変えずに、フリーペーパー化しています。インターネットなら情報がただで得られるのだから、紙媒体も無料でいいではないか、という価値観が世の中に広がったせいです。情報配信そのものも、どんどんインターネットに移行し、規模も大きくなっています。

 そうした価値観の移り変わりに対応しなくては生き残れませんが、だからといって無思慮にそっちへ流れていくことには疑問を感じます。責任ある立場として、本当に社会に対してそのメッセージを発信していいのか、という疑問ですね。

 たとえ巨大な船でも、一つ舵取りを間違えたら転覆してしまいます。だから一つ一つのサービスを、様々な角度から検討する必要があるんです。最終的に誰が支持されるか、ということこそが重要なので、5年、10年という中長期的なスパンで判断することが大切だと思いますね。

マイクロソフト 執行役 オンラインサービス事業部 事業部長
笹本裕(42歳)

1964年タイ・バンコク出身。1988年獨協大学法学部法律学科卒業、ニューヨーク大学経営修士修了。リクルート入社、電子メディア事業部などを経て、ISIZE事業部副編集長。1999年クリエイティブ・リンク取締役COO。2000年MTVジャパン取締役COOとして入社。2001年MTVジャパン開局、MTVジャパン代表取締役副社長に昇格。2002年同社代表取締役社長兼CEOに就任。2007年2月マイクロソフト入社、執行役オンラインサービス事業部事業部長就任。

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