マイクロソフトは「Windows Live Search」の正式版を9月11日から開始したことを米国で発表したのは既報の通りだ。このWindows Liveについて日本では、これまで公の場で正式に説明される機会がほとんどなかったが、ついにその戦略やサービスの一端が9月13日に明らかになった。
2005年11月にサンフランシスコで初めて発表されたのがWindows Live戦略だが、核となる考え方は、これまでソフトウェアの販売やライセンスを中心としてきたマイクロソフトの収益構造を、オンライン広告事業へと拡大するということだ。
マイクロソフト執行役 オンラインサービス事業部の塚本良江氏は、まずLive戦略について理解してほしい点として2つ挙げた。1つは「ソフトウェア+サービス」で、ここでいうサービスとはソフトウェアのオンライン化を指す。これまでPC、つまりWindowsのうえだけで提供してきたソフトウェアと、ウェブのサービスをつないでいくことで新たな付加価値を提供していくことだ。
マイクロソフトは、これまでソフトウェアのライセンス料をさまざまな投資に充てて成長してきたが、ソフトウェア+サービスを展開していくうえでまかないきれるだろうか。塚本氏は、「ウェブをプラットフォームとして利用し、そのうえにいろいろなサービス群を開発していくときには多大な投資を必要とするが、その投資をすべてまかなえるぐらいにオンライン広告市場が急拡大している」と説明した。
これがLive戦略を理解するためのもう1つの点である「広告ビジネスモデル」だ。つまり、ウェブで提供するサービスの原資は広告になるというわけだ。米国ではすでに、Officeアプリケーションをオンラインでさらに活用して利用できる小規模企業向けサービス「Office Live」や「Windows Update」などですでに広告が導入されている。日本でもWindows Liveサービス群の一部には、マイクロソフトの自社広告が展開されている。
このため、Liveの展開は日本でもオンラインサービス事業部だけで手がけるわけではなく、全社をあげて提供していく。オンラインサービス事業部がWindows Live、Office事業部がOffice Live、Xbox事業部がXbox Liveをそれぞれ提供していくのだ。
広告事業の柱になるのが、「AdCenter」という広告配信プラットフォームになる。日本では準備中で、「いつ提供できるかなど、詳細はいまのところ何も言えない」(塚本氏)。AdCenterを簡単に説明すると、MSNやWindows Liveを利用するユーザーが登録したMicrosoft Passport(Windows Live ID)の情報から、どのような広告がどういった人に見られているかなどの統計情報を、リアルタイムで広告主にレポートし、広告主はこの情報を分析しながら必要なターゲットを設定して適切な広告を配信できる仕組みになっている。もちろん、ブラウザを通じてすべて管理でき、たとえば時間帯別、男女別、国・地域別といった具合にいろいろな設定を組み合わせて、さまざまな広告を配信する。
実は、MSNのサイトではすでにこのAdCenterの仕組みを一部利用している。リスティング広告やターゲティング広告の仕組みで、グーグルのアドセンスやヤフー(オーバーチュアのスポンサードサーチ)に大きく遅れを取った感のあるマイクロソフトだが、このAdCenterへの引き合いや期待はすでに国内でもけっこう高い。広告主や代理店は、「後発だから変なものを出してくることはないだろう」という消極的な期待の他に、ある代理店のオンライン広告担当者のように「グーグルとヤフーの2者だけが競争している状況より、さらにマイクロソフトというビッグネームの会社が参入して、皆で熾烈に競争しあう環境のほうがいいものができるし、市場も拡大していく」という声も上がっている。
オンライン広告市場について塚本氏は「グローバルな数字だが、ソフトウェア事業はだいたい13兆円規模。片や広告市場というのは55兆円ぐらいと言われ、2009年頃にはその広告市場のおよそ10%をオンライン広告が占めると予想されている」とした。
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