自然の営みを模倣した新たな燃料作りに取り組むハイテク燃料企業、LS9は、米国時間3月12日、500万ドルの資金調達に成功したと発表した。化石燃料の代わりとなる燃料を植物や微生物から抽出する研究が活発化する中での動きだ。
LS9は、合成石油や石油ベースの工業製品を「再生可能な石油(renewable petroleum)」と名付け、その開発を目指している(同社はRenewable Petroleumという名称を商標登録している)。
合成石油について、支持者たちは、単位量あたりのエネルギーがエタノールより大きいうえ、現在世界中を走っている膨大な数の自動車でそのまま使用できると、そのメリットを強調する。また、地中から発掘する原油から精製される通常のガソリンに比べて、二酸化炭素の排出量も少ないとのことだ。
SolazymeやLiveFuelsなどの新興企業は、藻類から合成石油を作り出す計画をすでに発表している。両社によると、群生する藻類が二酸化炭素やその他の化合物を吸収し、それらの化合物を代謝して石油に変化させるのだという。
これに対して、LS9は、合成生物学を利用して石油を生成するとしている。合成生物学とは、実験室や工業生産で用いられるプロセスを応用し、藻類や微生物と同じ機能を実現するという研究だ。これが実現すれば、生きた単細胞生物に依存せずに石油が生産できる。理論上は、この製造プロセスを用いることで、生産性能の強化や制御もより容易になるるはずだ。ある意味で、LS9の試みは、生物の類似物から石油の類似物を作り出そうとするものと言える。
LS9の取り組みの大部分は、スタンフォード大学植物生物学教授のChris Somerville氏とハーバード・メディカルスクール遺伝学教授のGeorge Church氏の研究成果をもとにしている。Somerville氏はCarnegie Institutionのディレクター、Church氏はマサチューセッツ工科大学とハーバード大学が共同運営する米エネルギー省GTL(GTLはGenomes to Lifeの略)Bioenergy Research Centerのディレクターも務めている。LS9の主な出資元は投資会社のKhosla Venturesで、同社のパートナーであるDoug Cameron氏がLS9の最高経営責任者(CEO)代理を務めている。
Khosla Venturesは、合成生物や自然界の生物が持つ力の利用に取り組むさまざまな企業に出資し、比較的短期間のうちに、微生物派とでもいうべきグループを形成した。同社が出資している企業には、シロアリの代謝過程を模倣することでエタノールを生成する方法の開発を目指す、カリフォルニア工科大学からスピンアウトした企業のGevoもある。また、Khosla Venturesは、微生物を利用して余剰農作物やその他の植物をエタノールに変換する工場をニューヨーク州に建設しているMascomaの主要な出資元でもある。
さらに、カリフォルニア工科大学の教授であるMel Simon氏が設立した工業用酵素のメーカーで、Diversaに買収されたCelunolにも、Khoslaは出資していた。Simon氏は、Gevoに対し、シロアリを模倣するアイデアを勧めた人物でもある。
LS9が持っている専門的知識のほとんどは、燃料に変換される原料や植物の機能を高める技術に関するものだ。しかし同社は、学術機関やDiversaなどの企業と共同で、合成燃料の開発に取り組もうとしている。
合成生物学を応用した燃料生産を目指す企業は、LS9のほかにも数多くある。新興企業のAmyris Biotechnologiesは、合成生物学を使ったマラリア治療薬を生み出したが、同じ方法を用いたジェット燃料の開発にも取り組んでいる(Khosla Venturesはこの企業にも出資している)。また、ヒトゲノムの解析に関わったCraig Venter氏は、Synthetic Genomicsという企業を設立し、自然生物学と合成生物学の活用に取り組んでいる。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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