ワシントン発--Microsoftの会長Bill Gates氏は米国時間3月7日、連邦議会において、H-1Bビザ(特殊技能者用の短期就労ビザ)の発給数を「無制限」にすることと、米国における教育の向上が必要であると再び訴えかけ、議員の多くがその主張に理解を示した。
Gates氏は、自身にとって3度目となる議会公聴会において、上院健康教育労働年金委員会の議員らに対して、国家としての競争力を高めるためには3方向からのアプローチが必要であると主張した。3方向とは、米国の学生や教師、労働者に必要な数学および科学のスキルを身につけさせること、研究費の増額、米国企業がより多くの外国人を雇用できるようにするために移民法を改正することである。
Gates氏は議員らに対して、米国は他国と比べてテクノロジ分野で誇れるものを数多く持っているものの、「米国の競争力に目を向けた場合、私の誇りに大きな不安が入り混じる」と述べた。
Microsoftの会長であるGates氏がこういったことを主張するのは初めてというわけではない。Gates氏やその他のハイテク企業のリーダーらは長年、特に数学および科学分野における米国の教育システムや労働力を悲観視している。彼らは、思い切った政策転換がなされない限り、米国はハイテク分野における競争力の優位性を失ってしまうだろうと主張している。
教育に関してGates氏は、米国における科学やテクノロジ、数学の分野の学士数を2015年までに2倍にする必要があると主張した。Gates氏は委員会において、そのためにはより多くの資金と、さらなる対策が必要だと述べた。その中には、高校における科学および数学の教師を1万人増員することや、大学生向けに2万5千人分の奨学金枠を新たに設けること、大学院生向けに毎年5000人分の研究奨学金枠を新たに設けることなどがある。
研究に関してGates氏は、政府の研究プログラムに対するより多くの資金提供と、研究開発費に対する恒久的な優遇税制の必要性について議員らに嘆願した。後者については、Bush大統領も支援を表明している(研究開発費に対する一時的な優遇税制は、2006年末に議会によって承認されている)。
テクノロジ分野における政府プログラムに対してさらなる資金提供を行うための法律を議会で通過させる動きはすでに始まっている。今週の初めに、多数党院内総務のHarry Reid氏や少数党院内総務のMitch McConnell氏を含む複数の有力上院議員が、「America Competes Act」(米国の競争力強化に関する法案)と呼ばれる法案を提出した。同法案の目的は、Gates氏を始めとするハイテク企業のリーダーらの提案する教育および研究における目標の多くを推進することにある。
また、議員らは移民に関する新しい法律を制定するうえでも、Gates氏の提案を参考にすることを示唆している。Gates氏は、科学分野において能力のある資格保持者が「危機的な」レベルで不足しているとみており、この現状を打開する唯一の方法は「高い能力を持つ科学者やエンジニアで、米国に住み、働き、税金を払いたいという人々に門戸を開く」ことだとその証言で述べている。
Gates氏は、ハイテク企業が従来から主張しているH-1Bビザシステムの見直しを改めて主張した。H-1Bプログラムは1990年に開始され、現在は年6万5000人に対してビザが発給されている。H-1Bビザは、特定分野において最低1つの学士を持つ外国人が、米国において最高6年間就労することを許可するものである。
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