消費者の不利益にならない企業ポイントシステムを--経産省が研究会を発足

 経済産業省が、企業が顧客にサービスとして発行するポイントシステムの業界ルールを検討する「企業ポイント研究会」を発足し、2月23日に第1回会合を開催した。

 企業ポイント研究会の創設は、近年普及するポイントシステムにおける課題を整理し、ポイント交換時におけるルールを策定するのが目的。メンバーには、NTTドコモやKDDI、クレディセゾン、日本航空、楽天など、企業ポイントを発行している流通、クレジットカード、ネット通販、通信などの事業者の代表や学識者27名が名を連ね、議長には、慶応義塾大学教授の國領二郎氏が選出された。

 企業ポイントは、現在、さまざまな業界で顧客の囲い込みや販売促進等を目的として発行されている。また、異業種の企業との提携によりさまざまな企業のサービスで利用できたり、電子マネーとの交換が可能になったりするなど、利用範囲が拡大している。

 野村総合研究所コンサルティング事業本部情報・通信コンサルティング1部の冨田勝己氏によると、企業ポイントの年間発行額は現在4500億円以上。2011年度には5500億円超の規模に成長することが見込まれているという。

 一方、ポイントの還元率を企業側が一方的に変更するなど、消費者の信頼を損ねる事例も発生している。企業ポイント研究会ではこうした課題や問題に対して、(1)消費導線の把握による効果的なマーケティングの推進や地域活性化を可能とするビジネスモデルの開発など、将来ビジョンの提示、(2)ポイントの有効活用と消費者保護との両立、(3)異なる企業ポイント間の交換に関する考え方、ポイント市場を健全発展させるための情報インフラのあり方等、企業ポイントと電子マネーに関する考え方の整理――の3つの観点に則して検討していく。

 会合の冒頭で挨拶した、経済産業省の松井英生商務流通審議官は「企業ポイントがユビキタスネットワーク社会とうまく連携することで、我々の経済、社会を極めて豊かなものにしていくと期待している。どういったかたちで健全に振興していくかという観点で整理をしていきたい」と語った。

 研究会では今後、まずは多様性にあるポイントサービスを整理し、そもそも企業ポイントとは何かという点についての共通認識をまとめたうえで、個々の問題点の検討に移る。なかでも、地域コミュニティーやネットコミュニティーの活性化に果たす役割や、情報インフラの整備、消費者の個人情報保護の観点が重点的に議論がなされる見通しだ。

 ただし、すでに参加メンバーの間から「さまざまな業界に関係するポイントサービスを、ひとつのガイドラインで規定してもいいのか」という声も出ており、あらゆる業界にまたがる汎用性の高いルールの策定には、さらに多くの検討課題が浮上しそうだ。研究会は、今後月1回のペースで開かれ、6月末までに報告書をまとめる方針だ。

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