楽天は2月15日、2006年12月期(1〜12月)連結決算を発表した。上場以来、初の増収減益決算だ。
主力のECが堅調に推移して売上高は前期比56%増の2032億円だったが、利益面ではクレジット事業の売却などで減益に転じ、営業利益は同16%減の291億円、経常利益は同15%減の304億円、当期純利益は同86%減の27億円だった。
TBSとの経営統合は暗礁に乗り上げたままの模様で、一切のコメントをさけた。一方、今後の成長戦略としては海外展開やWeb 2.0関連など新規事業の推進を示した。
グループの足を引っ張ったのは金融事業。利益減の主因となったクレジット・ペイメント事業は売上高が同68%増の796億円、営業損失は61億円だった。将来性がないと判断した信販子会社のクレジット事業をオリエントコーポレーションに譲渡したことによる損失に加え、貸倒引当金や利息返還損失引当金繰入額などが影響した。
仮想モール「楽天市場」を主軸としたEC事業の売上高は前年比68%増の591億円。ECの年間取扱総額は6570億円で、米国で展開する成果報酬型広告事業を行う子会社LinkShareを含まない国内ECの取扱総額は前期比37%増の4607億円だった。安価な出店プランによる出店舗数の純増とユニーク購入者数の増加などで楽天市場の売り上げが伸び、一時的に店舗支援人員の増強でコストが上がったものの、第4四半期の営業利益率は54%(直前四半期は40%)に回復した。
ポータルサイト「インフォシーク」などを中核としたポータル・メディア事業は売上高が同38%増の130億円、営業利益は同79%減の3億円。新規サービスの投資や人件費がかさんだ。トラベル事業は売上高が同45%増の107億円、証券事業は売上高が同53%増の405億円だった。
会見の席で楽天会長兼社長の三木谷浩史氏は、仮想モールの海外展開の方向性について言及した。子会社の米LinkShareを活用して「米国ではLinkShareに市場的な機能を付けて展開する。早ければ今年中には始めたい」とコメント。欧州についても同様の方式で展開するとしている。また、中国に関しては「ネットビジネスを行うには微妙な問題が多く、まだリサーチ段階」としている。
また、今年1月17日に公開した商品情報などのAPIの利用状況は、2月15日現在までの1カ月間で約4500件の登録があり、「はてな」などの大手サイトでも利用されていることから、「集客面で徐々に寄与し始めている」とした。
一見、本業のECは好調で、一時的な金融事業のテコ入れによる増収減益決算に映る。しかし、三木谷氏は口を閉ざすが、すでに今後の成長戦略として示した「通信と放送の融合」による事業展開において、TBSとの経営統合に何ら進展は見られない。これまでに同社が示した成長戦略を純粋に解釈するのならば、テレビやポータルなど従来型のメディア概念を軸に事業規模を拡大してきたのだから、近く答えが出るTBSとの案件の行方によっては、今後の成長性を示しづらくなる。
一方で強調し始めている海外展開とWeb 2.0関連などの新規事業は、現時点で業績を大きく左右するには至らない。さらにネット上では、急速に従来型のメディア概念とは異なるCGMなど消費者主導のメディア新潮流が押し寄せてきている。
屋台骨のEC事業も伸び率が鈍化(国内ECにおける取扱総額の伸び率は1年前に比べ15ポイント減少)し続けている楽天は今、通信と放送の融合とは異なる手法での成長性を示す方向転換を迫られており、それが業績面にも見受けられるようになる展開が必要となっている。
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