グーグルのラジオ広告進出は「文化と文化の衝突」--dMarc創業者らの退職で浮上する懸念 - (page 2)

文:Elinor Mills(CNET News.com) 翻訳校正:編集部2007年02月20日 13時38分

 Cumming氏によると、Googleはラジオ局に対し、売れ残りの枠を提供するのでなく、一定の広告枠を確保することを要求したという。しかし、Googleが売れ残りの広告枠以上の単価で販売することを保証しない限り、ラジオ局はこの要求に応じないだろうとCumming氏は述べる。「(一定額以上で販売することを保証しようと思っても)ロサンゼルスのラジオ局の場合、ゴールデンアワーの広告枠は高い」(Cumming氏)

在庫の取り込み

 Greater Media Detroitの所有するラジオ局もラジオ局向けの広告販売システムAdSense for Audioに参加している。同社のシニアバイスプレジデントBender氏は「これは文字通りの実験だ。月ごとに結果は異なる。これらの広告がラジオ局にもたらした売り上げはわずかだ」と述べる。

 Greater Media DetroitがGoogleに提供しているのは、在庫の広告枠だ。「Googleのようなタイプの広告販売システムのために広告枠を確保しておくことは、経済的に不利だ。セルフ形式のシステムがもたらしてくれる売り上げは従来の販売システムがもたらしてくれる売り上げと比べ物にならない」(Bender氏)

 在庫の広告枠にしても、ラジオ局には安売りするつもりはない。「誰かが枠を15ドルで買ってくれるかもしれない。それに、リスナーを喜ばせるために、その時間にレコードをかけるという選択肢だってあるかもしれない」とBender氏は言う。

 Googleのラジオ広告サービスでは、広告主が特定の都市や地域の特定期間内における日付と放送時間帯、上限価格を提示する。広告を流したい番組のタイプ(人気トップ40、ニュース、クラシック音楽など)を指定することも可能で、性別や年代など番組のリスナーに関する情報も提供される。しかし、広告主はラジオ局を指定することができない。

 専門家の意見では、広告主が気にかけるのは選択できるラジオ局の数と、その局が強みをもつ市場だという。一方、ラジオ局にも、いわゆる「ソリューションベースの販売」という手法がある。これは、広告キャンペーンの効果が出ない場合に、広告キャンペーンの制作を手伝ったり、景品提供やコンテストなどを絡めた多面的な販促プロモーションを行い、広告戦略の修正を支援するやり方だ。

 「ラジオの中心課題は、いかにして番組と広告を創造的に組み合わせるかだ。車のカーラジオや卓上のラジオからどんな番組が流れていて、その番組にどんなコマーシャルがふさわしいか?われわれは、クライアントのそうした細かな要望と直接関わっている」と、Greater Media DetroitのシニアバイスプレジデントBender氏は話す。

 「これは、ソフトウェアと、より直接的な販売指向の環境の、どちらが優れているかという問いだ。極度に単純化されたソフトウェアインターフェースでは、問題を理解し解決できるとは限らない」(Bender氏)

 Googleは「Ad Creation Marketplace」を提供している。これは、広告主を広告制作のプロと引き合わせ、広告制作を支援するプログラムだ。しかし、ラジオ局の広告販売員が広告主にアピールする魅力には及ばないと専門家は指摘する。

 Googleに協力している某ラジオ広告購入代理業者の役員によると、「(Googleは)われわれに十分に配慮していた」が、Google Audio Adsのテストに参加し、顧客が自社と連絡を取れるようにウェブサイトのURLや電話番号をラジオ広告で流した顧客にとっては、最良の結果は得られなかったという。

 ラジオ広告枠の購入を代行支援するStrategic Mediaの社長、Jeff Small氏は、いわゆる「ダイレクトレスポンス」(直接的な反応)を求める広告主は、Googleのラジオ広告システムにとって最良の顧客ではないかもしれないと話す。さらに、広告枠はタイムリミットぎりぎりで販売されるため、広告主には広告キャンペーンを計画する十分な時間がなく、何か不都合が起きたときに頼れるラジオ局の広告担当者もいないと、Small氏は指摘する。

 「Googleでは、すべての処理がシステムによって行われ、人間の手を介さない。Googleには私の担当者がいるが、この人がラジオ局と直接仕事をしているわけではないし、私が必要とするラジオ局に顔が利くわけでもない。Googleが話を持ってくるラジオ局は比較的市場の小さい局が多く、利益を上げるのに必要な規模に達していない」とSmall氏は言う。

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