最後はインデックスの経営戦略局兼技術局局長の寺田眞治氏。寺田氏は「なぜiPhoneは日本で使えないのか?」とし、iPhoneを例に、国内市場においてユーザーの選択肢を阻む「ボトルネック」が存在していると主張した。
寺田氏は、プラットフォーム、通信サービス、ネットワークのレイヤーにおいて、日本が世界市場と隔絶した高度なモバイルビジネス・カルチャーを達成したが結果として海外市場からの孤立化を招く、「ガラパゴス諸島状態」にあると主張した。「国境のないネットワークの世界で鎖国を続けることは不可能」とし、海外からグローバル・スタンダードが流入すれば、「海外進出どころか、グローバル・スタンダードの流入で国内市場構造の大半が塗り替えられる恐れすらある」との懸念を表明した。
そこで問題の本質になるのは、グローバル・スタンダードへの移行方法であるとし、「(グローバル・スタンダードと)日本型モデルとは共存しえないのか?」と課題を投げかけた。
寺田氏は、その課題を解くカギは「ユーザー・オリエンテッドな環境」にあると主張。最終的な選択権はあくまでユーザーにあり、既存モデルに加えて様々な選択肢を提供する必要があるとした。
加えてFMCの進展についても「次なる不安」として、「更なる巨大な垂直統合事業者が出現する可能性はないか」と警鐘を鳴らした。「次のビジネスの変革点が、ある1社によって決められてしまう可能性がある」(寺田氏)。
オブザーバー3者によるプレゼンテーションを受けて、研究会構成員による質疑や討論が行われた。
研究会座長を務める東京大学名誉教授の斉藤忠夫氏は、「多様なモバイル機器へのパラダイムシフトを強調する割には、市場の飽和を口にしている。多様化の時代に対して世界に通用する対応はできるのか」と質問。さらにCIAJの「急激なビジネスモデルの変更は市場の混乱を招く」との主張に対して、「日本の端末メーカーは海外市場でまだチャレンジする気はあるのか」という辛らつな質問も寄せられた。これに対してCIAJの資宗氏は、「メーカーは海外に出て行ってうまくいかなかった。『気持ちはあるのかどうか?』と尋ねられたら、あるに決まっている。しかし、リスクとの比較はしなくてはならない」と回答した。
また、他の構成員からもCIAJに対して「国際市場では、サービスプラットフォームに対して、既存の端末メーカーが覇権争いをしているのが世界の現状。しかし日本のメーカーを見ると、キャリアのサービスに乗っかろうとしているように見える」との指摘がなされた。
さらに、「急激な変化を望まず、ソフトランディングすることばかり考えているように見えるが、仮に劇的にモデルを変えて、ハードランディングした場合の市場成長のシナリオについても見せて欲しい」との要請があった。「既存モデルとの並存ばかりではなく、雑駁でも構わないので、それ以外の選択肢も見せてもらえなければ、それ以降の戦略が見えてこない(構成員)」とし、今後の研究会では劇的な制度変化を行った場合の考察や詳細なデータを披露するよう要請した。
最後に構成員から「(ビジネスモデルの変革には)大きな影響もあるかもしれない。しかし誰も皆さんが不幸になることを望んでいるわけではない。ただし、いつまでも同じことをしていては、日本経済は回復しない」との言葉があり、3回目の研究会は締めくくられた。
研究会の4回目は3月19日開催予定。次回はオブザーバーとして、ウィルコム、JR東日本、フューチャーモバイルなどがプレゼンテーションを行う予定だ。
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