「市場縮小は確実」(NTTドコモ)「ドコモのシステムは出来損ないか」(研究会)――。
総務省が2月2日開催した「モバイルビジネス研究会」では、激しい論戦が繰り広げられた。
携帯キャリア主導による垂直統合型のビジネスモデル、端末の販売奨励金制度、SIMロック(契約者情報搭載カードの利用制限)――など、今ある携帯電話業界の根底を流れるさまざまな問題。
モバイルビジネス研究会では、これらについてその是非を徹底研究し、国際的な観点から同業界の競争力強化に向けた必要事項を洗い出すことを目的に開催している。その第2回では、オブザーバーとして参加したドコモの消極的な意見に研究会構成員たちの非難が集中し、中にはドコモの主張を消費者無視の“村社会の論理”と痛烈に批判する声も飛び出した。
最初にプレゼンテーションを行ったのはNTTドコモ取締役執行役員の伊東則昭氏。まず、MVNO(仮想移動体サービス事業者)に対して「既存市場の中で争うのではなく新しい市場を開拓するWIN-WINの関係であるべき」と一定の理解を示したものの、「投資リスクを負わずに参入し、“いいとこ取り”をするようなMVNOの参入それ自体を目的とする政策は避けてほしい」と主張した。
また、同社が大きなシェアを保持するパケット無線通信網やiモードなどの課金・認証プラットフォームの他事業者への開放についても、伊東氏は「競争力の源泉のため開放できない」「セキュリティの確保が前提」と消極的な姿勢に終始した。
販売奨励金やSIMロック解除の問題については、検討すべき問題であると認識しているとする一方、SIMロックを解除してドコモ製以外の端末を使うと留守番電話サービスなどの付加機能が使えなくなるなどの問題点を指摘し、「対案を出せればいいが現時点ではない」とした。
さらに伊東氏は、上記の検討事項が実施された場合「市場が縮小するのは確実」とし、端末メーカーや販売代理店の市場にまで影響が及ぶことを指摘したうえで、「国内市場に混乱が生じると、端末メーカーやキャリアの国際進出にも影響が出る」と付け加えた。
続いて説明をしたソフトバンクモバイルの常務執行役 五十嵐善夫氏は、「垂直統合モデルでは限界がある」としてMVNOにある程度前向きな考えを示した。また、国際競争力については「特定の分野のみの国際競争力強化では不十分」と主張。端末メーカーの海外進出だけでなく、モバイル関連産業全体として競争力強化を実現していく必要があるとの考えを示した。
SIMロック問題に関しては、ドコモ同様に解除すると利用できる機能は限られてくるとした。携帯キャリア3社が膨大な設備投資を個別に行っている現状に対しては、「設備共用」や「ローミング」を3社間で実施することによる利用者への利益還元を主張した。
最後に説明したMVNO協議会 幹事会議長の福田尚久氏は、まずラジオやカーナビ、iPodなどを例に挙げ、「消費者が本当に欲しいのは、『これだけ買えばすべてできる製品』である」という説を披露。ハードやコンテンツ、通信が一体となって消費者に提供されることで消費者にわかりやすい製品となり、普及するとした。
携帯電話の普及について福田氏は、これまでのキャリアの各種施策に一定の評価を示したものの、「携帯電話はすでに普及期から成熟期へと変化している」とし、新たな製品やサービスを創出できる環境への変化が不可欠との考えを示した。
それを実現するため、福田氏は後発プレーヤーの参入を考慮して過度に低価格で端末を販売する販売奨励金は禁止すべきだと主張。国際基準に完全に準拠した端末・ネットワーク間インタフェースの適用が必要との考えを示し、通信レイヤーでも相互接続に関して透明性を確保した接続料金、卸料金の適正化を図るべきだとした。
さらに、プラットフォームに関しては、「寡占事業者が先行して保有している」として、新プレーヤーに対する貸し出し義務を設定する必要があると主張した。
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