新テレビポータル「アクトビラ」で消費者を満足させられるのか - (page 2)

映像提供サービス提供で優位もあるが

 ただし、アクトビラ2.0ともいえる、次に提供が予定されている映像配信サービスが開始されると状況は好転する可能性がある。というのも、ブロードバンド先進国であるにもかかわらず、依然として日本の映像配信サービスはさまざまな理由において、貧弱な状況に甘んじているからだ。少なくとも、レンタルビデオ/DVD市場に脅威を直接的に与え、結果、凌駕することもできるだろう。

 もちろん、このためには現状のテキストと画像のみに対応した旧Tナビ/TVホーム対応機ではなく、新たに映像データの再生、キャッシングなどの付加的な装置を備えた次世代規格でないとダメなのだが。

 さらに言えば、テレビだから映像という点での優位はここで成立するものの、YouTubeに代表される投稿型のサービスのように視聴者が提供者になる仕組みで間接的にネットワークの外部性を生じさせることの強力さを知ってしまった消費者にとって、アクトビラはいかんせん「お仕着せのもので我慢せよ」というのに近い。

すでに消費者はメーカーの先を行く

 やはり、「テレビだからこの程度で十分」あるいは「リビングであればむしろコレくらいがちょうどいいだろう」といった供給者の論理はもはや通じない。たしかに、「テレビに望むもの」といったアンケートやヒアリングであれば、この程度の解であっても十分な回答を得られるに違いないが、すでに消費者が求めているのは「テレビ以上」のものではないか。メーカーの考えるテレビ像は一昔前のものであり、想像上の消費者に対して「イノベーターのジレンマ」を抱えつつある状態にある。本当に、日本の誇るメーカーの実力はこの程度のものなのだろうか?

 結果、アクトビラという、日本固有のブロードバンド環境へプラグイン可能なテレビとそのサービスは、ケータイで生じている「ガラパゴス症候群(外部と隔絶された土地で固有の種が固有の進化を遂げている状態。しかし、外部からの種の侵入によって、絶滅的な状態に陥る可能性が高いこと)」に陥る―しかもケータイでは一度は生じたパラダイス状態を経ることなく―可能性が高い。

 テレビであって、テレビでないもの。ウェブブラウジングという新たな価値であっても、これまでのテレビ放送と同様、放送局の代わりにTVPSが編成したサイトしか見られない状況・構造そのものに物足りなさを感じ始めた消費者が多くなっている現在、ケータイの時のような大ブレーク=ケータイパラダイスすらあまり期待できまい。

 「そんなものに対応していたらテレビではなくなる」という声も聞こえなくもない。しかし、すでにテレビというものは放送を受け表示する大型ディスプレイでしかなくなりつつあり、それ以外の「従来のテレビならざるもの」を目指さない限り、サプライズ=コモディティからの脱却は起こりえなくなっているのではないだろうか。

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