Windows開発責任者J・オールチン氏、Vista発売までの悪戦苦闘を振り返る(後編) - (page 2)

文:Ina Fried(CNET News.com) 翻訳校正:緒方亮、大熊あつ子、小林理子2007年02月05日 08時00分

 Allchin氏は開発面にはもっと深く関与していた。MicrosoftがVistaの完成を発表する前の数日間、Allchin氏とその技術アシスタントは、開発チームやサーバの自動テストプログラムが見落としたおそれのあるバグを検出しようと、複雑なシナリオの試験に長い時間を費やしていた。

 2006年11月の最後の追い込みの時期に、Allchin氏は、こうした試験の一環として、「私はボストンにいる母とビデオ電話をしている。母がマシンを起動できるよう、遠隔で操作を補助し、こちらのマシンからむこうのマシンへと『デスクトップの遠隔操作』をする」と語った。

 Allchin氏はまた、修正すべきバグがあるなら修正すべきだとして、最後の最後まで変更を要求したという。

 「(もし)改良点があるなら、組み込みたい」とAllchin氏は主張した。「当然、期日は私にとってあまり意味がない。品質のほうがはるかに重要だ」

退職のとき

 しかし、何カ月も眠れない夜を過ごしたAllchin氏にも、いよいよ休息のときが訪れた。Allchin氏は、今後の計画については明らかにせず、Microsoftと何らかの契約をするかもしれないが、それもまだ決まっていないと述べた。はっきりしているのは、MicrosoftにおけるAllchin氏の時代が終わったことだ。

 Allchin氏は、ニューヨークで開催されたVista発売の盛大なイベントには出席せず、30日にレドモンドで開催されたMicrosoftの社内イベントを統轄することを選んだ。翌31日、同氏はMicrosoftでの職務を終え、さらにその翌日の2月1日から休暇に出かける。「2月1日には、暖かいところに行って、ボートの上で過ごしているよ」と同氏は話していた。

 VistaがMicrosoftにおけるAllchin氏の最後の遺産になるのだろうが、同氏にはほかにも記憶に残る重要なイニシアティブがある。Microsoftがデスクトップソフトウェア企業から、サーバ市場における手ごわい存在となったのにはAllchin氏の力が貢献しているし、ネットワークコンピュータの時代に入っても、クライアントソフトウェアへの情熱は衰えることがなかった。

 Microsoftで何年もAllchin氏とともに仕事をし、現在はソフトウェアメーカーBorland SoftwareのCEOを務めるTod Nielsen氏は、「Allchin氏は、まさにミスター分散コンピューティングだ。根底にあるのは、コンピューティングは最良の方法でなされなければならないという信念なのだ」

 Allchin氏は、Microsoftの社史に残るであろう独占禁止法違反訴訟で果たした役割でも記憶されていくことだろう。同氏は裁判で、Microsoftの提出したビデオが、ビデオの各部分ごとに異なるPCを使用して改ざんされているように疑われる点について厳しく尋問された。

 「Allchin氏は、ビデオ問題の枝葉末節のところで追及された。不運としか言いようがない。Allchin氏はまったく関係がなかった。同氏の役割は、『ビデオでこれこれのことを表示するようにしたい』と言うことで『それだけだった』のだ」(Nielsen氏)

 Microsoft内では、新しい担当者がWindowsの管理を引き継ぐ。部門全体を統括するのは、これまで販売部門の責任者だったKevin Johnson氏で、開発については2006年に「Office」部門から異動してきたSteven Sinofsky氏が率いる。Sinofsky氏はOffice部門で、製品を確実に出荷期日に間に合わせることで評判だった。

 Ballmer氏は、次のWindowsリリースまでにふたたび5年の期間が開くことは望まないと明言した。しかし、スピードを求めるあまりに、重要な細部を忘れるようなことがあっては決してならない。特にもう、最も厳しい目を光らせた批評家はいなくなってしまったのだから。

 Windowsのマーケティング部門責任者を務めるSievert氏は、Sinofsky氏が守るべき大きな遺産を背負うことになったと語った。「さまざまな点で、ユーザー体験、セキュリティ、品質への注力を(確実に)継続していくことが、Sinofsky氏の仕事だ」(Sievert氏)

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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