全ては「新しくて面白いこと」のために--カプコンとコナミが生み出すコラボレーション

小川陽平(編集部)2007年02月02日 17時50分

 カプコンとコナミ。それほどゲームに興味がない人でも、この2社の名前を聞いたことがない人はいないだろう。どちらも数多くの名作タイトルをリリースしてきた、ゲーム業界でも最大手の2社だ。

 その2つの会社が、互いのタイトルでコラボレーションをはじめた。2003年のことである。
 コラボレーションの内容も、当初は、ただ互いのキャラクターが「登場」しあうだけだったものから、シリーズを重ねるにつれ「対戦」、「協力」などへ進化していった。そして現在ではコミュニケーションツールとして完成の域に達している。

 そのシリーズの名は、「ロックマン」シリーズと「ボクらの太陽」シリーズ。
 「ロックマン」はシリーズ誕生20周年を迎える、カプコンの看板タイトル。そして、「ボクらの太陽」は、太陽センサーという新機軸を搭載してキッズ市場へコナミが送る、戦略タイトルだ。
 どちらのタイトルも、今後10年、いや20年先の自社タイトルに対して、潜在的な支持層となる子どもたちが対象のゲームだ。

 そんな重要なタイトルが、なぜコラボレーションをするに至ったのか? そしてシリーズを重ねるにつれ飛躍的に高まっていった完成度の素地になった、開発者同士の交流とは?

 カプコンからは「流星のロックマン」プロデューサーの堀之内健氏、コナミからは「ボクらの太陽」シリーズプロデューサーの吉冨賢介氏に、コラボレーション企画の成り立ちと、現在、そして今後どう発展させていくのか? 開発者が見た企業間のコラボレーションについて聞いた。

カプコン 堀之内氏 カプコン「流星のロックマン」プロデューサー 堀之内健氏

--「ロックマン」シリーズと「ボクらの太陽」シリーズのコラボレーションがはじまった経緯を教えてください。

堀之内:僕の記憶の限りだと、かなりギリギリのタイミングで決まったと記憶しています。弊社の稲船(※1)とコナミの小島さん(※2)がもともと友人関係で、お互い子ども向けタイトルを開発するにあたっての話をしていたんですね。特にコナミさんは"ボクタイ"(※3)を新規で立ち上げるとうかがっていて。

吉冨:すでに"ロックマン"シリーズはタイトルを重ねて人気も知名度もあり成功されていたので、小島が相談にうかがったんですね。子ども向けタイトルをどうやっていこうかと稲船さんに相談をしていて、その流れでコラボレーションの話がでたというのが発端です。

コナミデジタルエンタテインメント 吉冨氏 コナミデジタルエンタテインメント「ボクらの太陽」シリーズプロデューサー 吉冨賢介氏

堀之内:弊社の稲船も小島さんもクリエイターなので、なにか新しい試みをやってみたいという欲求がありまして。2人で話をしていて、「ボクタイのキャラをロックマンに出してみない?」という、「出したら面白いんじゃない!?」という部分がはじまりですね。

--それでは、かなり急な話だったのですね。

吉冨:そうですね、かなり急でした。やるぞ! って(笑)。そういう点では、最初のコラボの時点では、あまり大々的には行えなかったですね。

堀之内:シナリオにちょっと登場するぐらいですからね。(※4)

ロックマンエグゼ4 画面 ロックマン エグゼ4に、ボクらの太陽の主人公"ジャンゴ"たちが登場した。

--キャラクターがNPCで登場! というコラボでしたよね。

吉冨:本当、それだけでも当時は画期的だったんですね。今思うとそれだけか!? って感じなんですけれど。当時は「おお! コナミのゲームにロックマン出てきた!」って(笑)。

堀之内:こっち(ロックマン)でも、シェードマンとか人気が出てきて、「これ、もともと何のキャラなの? ボクタイ!?」という感じで、そこからお互いの熱が上がってきたというのはありますね。

--実作業に入って、お互いの開発現場を見ていかがでしたか?

堀之内:開発としては、よそ様がどうやっているのかを直に見聞きできたことは大きいですね。開発の段階で、仕様書の書き方1つにしても違ったり、プロモーションでも、コナミさんはこの段階からここまで進めるんですか!? ……っておどろいたり(笑)。なんか、お互いの良いところを勉強しあえたという感触は、すごくありますね。

吉冨:勉強させてもらったことの方が多いかな。

堀之内:いやいや、またまた(笑)。

--他社さんの企画書とかは、新鮮ですよね。

吉冨:新鮮でしたねー! 「企画書の段階でここまで書いているのか!」って(笑)。

堀之内:お互いに情報交換をしたおかげで、「あ、ウチのチームの作り方って結構特殊なんだ」ってわかりしましたね。年1本のスケジュールで動くのになれていたので、結構企画書の段階でスケジュールを練り込んでいたんです。もっとも、かなりざっくりとした内容ですが。

吉冨:そこで、ボクタイチームもカプコンさんに習って、最近ではかなりきっちり仕様書を書くスタイルになってきたのですが、最初のころは太陽センサー(※5)を使うという特殊な仕様があったので、試行錯誤を繰り返しながら仕様を固めていく状態でした。

堀之内:実際には仕様書を書いておきながら、「すいません、変わりました」っていうのは結構あるんですけれどね(苦笑)。できあがったものを触ってみて、面白いか面白くないかというところを考えないと。

吉冨:その点は、物作りをしている現場なら、どこでも同じですよね。

※1:"ロックマン"や"鬼武者"シリーズを手がけた、カプコン常務執行役員 開発統轄 兼 オンライン事業統括 稲船敬二氏

※2:"メタルギア"シリーズや"ボクらの太陽"シリーズを手がける、コナミデジタルエンタテインメント 開発チーム小島プロダクション監督 小島秀夫氏

※3:シリーズ第1作「ボクらの太陽」 ゲームボーイアドバンス用/2003年7月17日発売

※4:「ロックマン エグゼ4 トーナメントブルームーン/トーナメントレッドサン」(ゲームボーイアドバンス/2003年12月12日発売)では、特定の条件を満たすと、「ボクらの太陽」の主人公"ジャンゴ"が登場し、特別イベントが発生する。

※5:「ボクらの太陽」では、GBAカートリッジに太陽光を感知するセンサー"太陽センサー"が搭載されている。センサーが太陽光を感知することで、ゲーム内のパラメーターが上昇し、プレイヤーキャラクターにさまざまな変化を与える。

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