Second Life不動産王とDMCA違反申し立ての舞台裏

文:Daniel Terdiman(CNET News.com) 翻訳校正:編集部2007年01月24日 08時00分
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 2006年12月、仮想世界「Second Life」の不動産王Anshe Chung氏が米CNET News.comのインタビューに登場し、Second Lifeの内幕を語った。「Ansche Chung」は中国人女性実業家、Ailin Graef氏が作成したアバターだ(Ansche ChungはSecond Lifeの不動産を少しずつ購入しては整備し、人に貸し出したり販売したりしていたが、2006年11月に、Second Lifeに最初に投資した9.95ドルが現実世界の資産や通貨に換算して100万ドル相当にふくらんだと発表して一躍有名になった)。

 広く報道されている通り、CNET NetworksのSecond Lifeシアターで大入りの観客を前に行われたこのインタビューは、「グリーファー(griefer)」と呼ばれる悪質なプレーヤーの一団によって妨害され、Ansche Chung氏は15分間にわたって、空飛ぶ男性性器の群れやポルノ画像による「デジタル攻撃」にさらされた。

 その後まもなく、攻撃の一部始終をおさめたビデオがポップミュージックのBGM付きでビデオ共有サイト「YouTube」に投稿された。この一件はオーストラリアの「The Sydney Morning Herald」紙とテックカルチャーブログ「Boing Boing」で報じられ、記事には問題のビデオのスクリーンショットが掲載された。

 ビデオと記事に用いられた画像はインターネットを通して瞬く間に広がり、Ailin Graef氏の夫でビジネスパートナーでもあるGuntram Graef氏を激怒させた。Graef氏はこのビデオを「著作権侵害」行為と見なし、デジタルミレニアム著作権法(Digital Millennium Copyright Act)に基づいて、YouTubeに申し立てを行った。

 Second Lifeはユーザーに自分が作成したコンテンツの所有権を認めており、問題のビデオと写真はAnshe Chung氏の画像を許可なく使用した点で著作権侵害にあたるというのが申し立ての内容だった。

 YouTubeはこれに迅速に対応したが、法律家の間からは、マスコミによる画像の使用は著作物の公正使用(フェアユース)にあたり、ビデオと写真の削除を求めるGraef氏の主張は報道の自由を脅かすものだという声があがった。1998年に制定されたDMCAは、著作権保護をインターネット上で公開されている素材にも広げることを目的としている。

 1月中旬、YouTubeとGoogle Videoにはすでに最初のビデオのコピーが出回り始めていたが、YouTubeは「利用規約違反」という新しい名目で問題のビデオを削除した。この件に関して、YouTubeから詳しい説明はなかった。

 先頃、Guntram Graef氏はDMCA違反を申し立てた理由と、後になってその主張を撤回した理由を公の場で初めて語った。

 独占インタビューはAnshe Chung StudiosがSecond Life内にオープンした新しい家具店で行われ、Graef氏は今回の問題を含め、さまざまな事柄に関する持論を語った。

--まずは何から始めましょうか。

 多くの誤認や誤解があると思います。

--というと?

 最初に明言しておきたいのは、今回の出来事に対してDMCA違反を申し立てたことを後悔しているということです。問題の核心は著作権にはありません。私の申し立てを検閲と誤解する人がいるとは思ってもいませんでした。そのような意図はまったくありません。どの記事も報じていないことですが、私は当初、すべての関係者に連絡を取り、彼らが配信した画像がいかに不適切なものかを対話を通して伝えようとしました。

 問題のビデオと画像は間違いなく中傷的で、性的暴力と言うべきものでした。私は情報の自由な流れを問題にしているわけではありません。Anshe Chung Studiosのメンバーは、マスコミが検閲を受けずに出来事や事実を報道することの重要性を認識しています。しかし、だからといって女性を傷つけるために作成されたポルノ画像をばらまいてよいということにはなりません。

--これらの画像がどう中傷的なのでしょうか。ただのパロディなのではありませんか。悪趣味ではありますが、パロディにすぎないのでは?

 多くの米国人とオーストラリア人が見落としているのは、Ailinが中国人だということです。巨大な男性性器を抱えているような加工写真が公開されることは、中国の文化圏で生きている人間には耐え難いことです。米国の基準に照らしても、男性性器を押しつけられている女性の画像を掲載するのは深刻な性的暴力であり、パロディとはほど遠いものです。

--それは分かりますが、この一件がニュースになったのはAnshe Chung氏が有名人だからです。それに画像--少なくとも「Boing Boing」と「The Sydney Morning Herald」に掲載された画像は事件を伝えるためのものでした。

 はい。だからこそ、われわれもマスコミの報道を妨げようとはしなかったのです。しかし、だからといって攻撃者が作成したポルノ画像をばらまく必要があるわけではありません。「Boing Boing」と「The Sydney Morning Herald」は攻撃者が作成した画像を使用しました。この攻撃の目的はただひとつ、作成した画像をインターネットに流通させることでAilinを傷つけることでした。

 一部の報道機関はこの目的に利用されたと言っても過言ではありません。たとえオーストラリア、米国、ドイツ、中国の法律には触れなくても、これはまったく無益で、悪趣味な行為であり、西側メディアの信用を傷つけ、多くの国で言論の自由の信頼性を損なうものでした。

--YouTubeとはどんなやり取りがあったのですか。

 問題のビデオに初めて気づいた時、私はこれがいかに下劣で不適切なものかをYouTubeに伝えようとしました。しかし、電話番号も、メールアドレスも、いかなる連絡手段も見つけることはできませんでした。用意されていたのはDMCA違反を申し立てるフォームだけでした。私はこのフォームを使いましたが、DMCA違反を申し立てたわけではありません。これは性的な個人攻撃であり、女性の人権を踏みにじる行為だと訴えたのです。著作権を問題にしたわけではありません。

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