人気のバーチャルワールド「Second Life」のコンテンツ制作者たちが、あるプログラムが広がることに抗議して、米国時間11月14日、仮想世界のなかで集会を行った。「CopyBot」という名称の問題のプログラム--ボット--は、仮想の世界に誕生したばかりの経済に大きな打撃を与えかねないと懸念されている。
議論が熱を帯びるようになったのは、Second Lifeを運営するLinden Labが13日、仮想世界の住人たちにCopyBotの存在について注意を喚起する情報をブログに掲載したのがきっかけだった。CopyBotを使えば、誰でもSecond Life内のあらゆるオブジェクトをコピーできてしまう。別のユーザーが自分のアバターに着せるために購入した服や、Dellが14日に、デジタルワールドで販売すると発表した仮想パソコンも例外ではない。
Second Lifeのユーザーは、ゲームを開発したLinden Labにちなんだ「リンデンドル」という名称の仮想通貨で、仮想アイテムを購入できる。しかし、ユーザーは仮想通貨を入手するために、現実の通貨を支払う。実際、現実のドルとリンデンドルの間には為替レートが存在する。1米ドルは271リンデンドルで、これはアバターの基本的な衣服一式を購入するのに十分な金額になる。
問題は、Linden LabがCopyBotの使用を阻止する手段があるのかどうかが、まだ明らかになっていないことだ。同社は、オブジェクトを盗まれたSecond Lifeのコンテンツ制作者たちに対し、盗難をただちに防止する方法はほとんどなく、制作者たちにとって最善の解決法は、デジタルミレニアム著作権法(DMCA)に基づいて--現実世界で--訴えることだと告げた。
仮想の世界で起業を試みた人の中には、収入が途絶えかねないと不安を感じたり、身ぐるみはがれないうちにSecond Lifeでの事業をたたもうと思いつめたりしている例もある。
2003年のベータ版のころからSecond Lifeに関わっているコンテンツ制作者Jim Mallon氏は、次のように話す。「DMCAによる対応の問題点は、何週間も時間がかかるということだ。決着するころには、作品が(コピーされ、盗まれて)至るところにばら撒かれてしまっているかもしれない。Linden Labがこの問題を予期せず、防止もしなかったというのは驚くべきことだ」
Second Lifeは筋書きのない3Dデジタルの仮想世界で、住人は想像できるほとんどすべてのオブジェクトを作り出せ、作成したものの知的所有権は作者に属する。結果として、洋服、乗り物、家具などをリンデンドルで販売するビジネスが多数存在し、こうした取り引きを中心に複合的で着実な経済が誕生している。
CopyBotに対する今回の反応は、仮想世界で起きた初めての抗議行動ではない。近い例では、Linden LabがSecond Life内の「島」の販売価格を引き上げると発表して、この世界に住む多くの人々の反発を誘った。結局、Linden Labは価格引き上げを2週間遅らせると発表した。
また、ユーザーインターフェースに関する問題や作成したコンテンツのセキュリティに関連してこれまでに起きた問題点などについても、住人から不満の声があがっている。
14日午後、議論が沸騰しているなかであえて、Linden LabはCopyBotとこれが引き起こす結果を論じた2本目のブログ記事を掲載した。
「CopyBotおよびこれに類するツールの使用は(利用規約)違反」と題されたこのブログ記事を投稿したのは、Linden Labの最高技術責任者(CTO)であるCory Ondrejka氏だ。同氏はこの仮想世界でビジネスを営む人々の、貴重な商品を盗まれるのではないかという不安をやわらげようと務めている。
「Second Lifeに必要なのは、資産やそれを複製した結果に関してより多くの情報を提供するための機能だ」という書き出しで、Ondrejka氏は記している。「残念なことに、この機能はまだ実現できていない。実現するまでの間は、Second Lifeの世界で未承認の複製を作ることを可能にするCopyBotなどの外部アプリケーションの使用は、規約違反とみなされ、アカウントを停止される結果を招きうるだろう」
CopyBotを作成したグループの1人で、Second Life内の名前を「Baba Yamamoto」という人物は、CopyBotに対するこの騒ぎは理解できるとしながらも、がっかりもさせられると言う。
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