世界に挑戦するベンチャーはいかにして生まれるか - (page 3)

永井美智子(編集部)、田中誠2007年01月25日 08時00分
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勝屋:崔さんに伺いたいんですが、これまで経営してきて、藤本さん、有本さんがいて助かったなと思ったのはどういう局面ですか。

:お2人には追加の出資もしてもらっていますからね。追加出資というのは1回だけの出資と比べてリスクも責任も大きいと思うんですが、ずっと弊社を信じて出資してもらえたことに感謝しています。あと、仕事の話だけでなく、個人的な話もするんです。「最近、女房がうるさい」とか、「従業員にこんなことを言われて頭が痛い」とか(笑)。社長という立場では社内では弱音を吐くこともできないんですが、そういう時に気楽にいろんな話ができるのが嬉しいです。

勝屋:VCにとっても経営者と信頼関係を作ることは重要ですね。

藤本:社長とお互いの考え方のキャッチボールができて本音が言い合えるというのはVCとして初歩の初歩で、必ずそれを確認してから投資しているんですが、崔さんの場合、最初に韓国に行った時から実家にご招待して頂いて、奥さま、お子さま、お父さまなど、皆さんにもてなして頂いたことがすごく印象的でした。他の投資先ではいくら本音で言い合えても、ご自宅まで招待していただいてご家族の皆さまにもてなして頂いたことはないですから。最初から心を開いて頂いたという感じなんです。

有本:信頼関係を維持するというのは、ざっくばらんに自分の言いたいことをさらけ出せるかどうか、そしてどういう時期でもさらけ出してくれるかどうかだと思うんです。投資をするタイミングでは、誰でもそこそこ本音をさらけ出すんですよね。お互いハッピーな状況なので。ただ、その後も信頼関係を継続できるかどうかが重要だと思います。

 VCから見れば、できていないことを第三者的に指摘するのは難しくないと思うんです。また、経営者にその意識がなければ根気良く、認識してもらえるように努めるだけです。ただ、意識はあっても様々な事情で後回しにせざるを得ないこともあるんですよね。そういう時にそればかり責め立てるのは良くないと思います。あるべき姿に関して共通の認識を持つことは極めて重要ですが、一朝一夕に解決できないことも多いですし、次元の低い話でVC側の組織の事情を押しつけるようなことをしても意味がないですしね。できない事情があるなら、例えば人的ソリューションを提供するなどして、それができる体制を組めるようできる限り協力すればいいんです。そういう役割もVCにはあると思います。

藤本:僕と有本さんは大体似たような企業に惚れ込んで投資しているんですが、今まで5社同じ会社に投資して、そのうち2社はもう株式公開しているんです。有本さんとは非常に役割分担がうまくいっていますね。僕は混沌とした中で事業の戦略を立てていくのが得意なんですが、反面、細かい部分を固めていくのは苦手なんですね。そのあたりは有本さんが得意なんです。

勝屋:崔さんに伺いたいんですが、これから資金調達を考えているような経営者に対して、VCとの付き合い方やVCの選び方について何かアドバイスはありますか。

:それぞれの経営者によって違いますから、会社によっては例えば藤本さんや有本さんと相性が合わないところもあると思います。相性というと抽象的かもしれませんが、相手との話し合いの中でキャピタルゲイン(株式売却益)以外の何かが感じられるかどうかが重要だと思います。

勝屋:有本さん、藤本さんがVCをやっていて嬉しかったこと、もしくはつらかったことにはどんなことがありますか。

有本:嬉しいことは些細なことからたくさんあるのですが、分かりやすく表現しやすいものとしては初めて自分が投資した企業が上場した時、それから上場した企業に良い株価が付いた時ですね。ただ、それがその後の自分の価値を保証するものでもないですし、一方でとても引き締まる瞬間でもあります。逆につらいことはあまりありません。趣味の延長というと語弊がありますが、ライフワークだと思っていますので。

藤本:僕もこの仕事は天職だと思っています。まだ誰も知らない状況で自分だけがその原石の輝きを見つけて、磨いていったら誰もが認める美しさになった――その時の喜びは大きいですね。

 それから、上場した時に感謝されるのはもちろん一番嬉しいんですが、上場後に株式を売却して株主ではなくなってもずっとフランクに付き合ってくれる経営者さんが多くて、そこからまた違うステージの付き合いができたりするのは嬉しいです。

勝屋:投資案件はどうやって探すんですか。

有本:僕は日本アジア投資に新卒で入っているので、最初はまったく企業とのネットワークがない状態でした。だから、いわゆる飛び込みの電話をかけたり、展示会に行ったりして探すしかなかったんです。そうやっていろいろな人から信頼を得て、徐々に企業を紹介してもらえるようになりました。今はほとんど飛び込み的な営業はしていませんね。

 最近は、「良い会社なんだけど自分たちでは難しいのでリードインベスターとして参加してくれないか」というような話を頂くこともあります。そういう時は自分の価値も上がってきたのかなと思います。入社当初からできる限り様々な出会いの場を含め、場数を踏む機会を逃さないようにしようと考えていて、取締役会に参加したり、仲間の経営者と飲む場所に誘われるようなことがあれば積極的に行っていました。今では比較的コンスタントに面白い話を頂けるようになっています。

 投資基準としては、まずその経営者が中長期的に人間として信頼できるかどうかですね。あと、最近は世界的にイノベーションを提供できるような会社に投資したいという気持ちが強くなりました。目先のIPOを求めていると、どうしてもそういう発想が薄れてしまうんです。IPOやキャピタルゲインの獲得だけに捉われてしまうとどうしても近視眼的、保守的になり、付加価値を追求していこうという姿勢が弱くなってしまいがちなので、違う視点も持つべきだと思います。

SeedC 代表取締役
崔正浩

1969年韓国ソウルで生まれる。1993年高麗大学文学部卒業、1995年早稲田大学大学院(商学研究科修士国際貿易専攻)卒業後、韓国新世界にて勤務。経営企画室企画チームに所属。1998年末に世界で初めてオンライン日本語教育事業を行うJ-CAMPUSを創業。2000年Tiger Japanを創業。2001年に大阪産業創造館アジアンベンチャーマーケットの運営に関するコンサルティング業務で来日。2002年ブロードゲーム(2005年にSeedCに社名変更)を創業。家族は妻(34歳)、娘(6歳)、息子(3歳)がいる。

趣味:囲碁、世界史関連読書

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