世界に挑戦するベンチャーはいかにして生まれるか - (page 2)

永井美智子(編集部)、田中誠2007年01月25日 08時00分

勝屋:お2人の最初の出会いはいつ頃だったんですか。

藤本:2001年ですね。大阪に大阪産業創造館(産創館)という大阪市経済局のインキュベーション施設があるんですが、そこで日本と韓国のベンチャーの橋渡しをしようというプロジェクトがあって、産創館が僕を呼んでくれたんです。2000年初頭から僕と有本さんは韓国に関わる別の会社に投資したりしていましたから、日本のVCで韓国に馴染みがあるのは藤本だろうということになったようです。崔さんはその時の韓国側の窓口でした。崔さんは韓国のインターネット企業協会の大阪事務局長という立場で、要するに韓国のベンチャーを日本に紹介する一番の窓口だったんです。

:私は産創館との1年間の契約で、韓国の企業を大阪に呼ぶ仕事をしていました。多くの企業が東京に行ってしまうので、大阪にも呼んで欲しいと頼まれたんです。その仕事の中で藤本さんとも出会いました。そして、2001年12月にソフトエキスポというIT関連のイベントが韓国であって、その時に藤本さんたちを招待したんです。

藤本氏、崔氏、有本氏

有本:その時に僕は藤本さんから声をかけてもらいました。面白い機会だから一緒に行こうと。3人で会ったのはその時が初めてです。投資先という関係を意識する前に会っていたわけですね。

勝屋:崔さんから見て、その時の藤本さんと有本さんの印象はどうでしたか。

:今と変わらないですね。出資して頂く前も出資して頂いた後も、ずっとこの会社を育てていくためにどうすればいいか、客観的な立場でいろいろとアドバイスしてくれる優しい人たちです。藤本さんは見た目も話し方も柔らかいんですが、有本さんの話し方は厳しいかな(笑)。韓国人はストレートに物事を言うのに慣れていますから全然問題ないんですが、会社の人は「今日、有本さん怒っていました?」なんて言っていることもありますね(笑)。もちろん、話している内容はすごく優しいですけど。

勝屋:会社を設立して資金を必要になった時に真っ先に思い浮かんだのがお2人だったんでしょうか。

:そうですね。

藤本:厳密に言うと、会社ができる少し前の2002年4月に崔さんと食事に行ったんですが、その時に会社を作るという相談を受けたんです。関西電力のサポートを受けることがすでに決まっていて、「それだったら弊社も投資しやすいので起業したら言ってください」という話はしていました。実際、7月に起業されて、9月に日本ベンチャーキャピタルが5000万円の投資をして、翌年初めに関西電力に投資してもらって会社の土台ができたんですね。その後は日本アジア投資などいろんな企業に参加してもらって会社を大きくしていったという流れです。

勝屋:かなりアーリーステージでの投資だったと思いますが、その会社が伸びるかどうかはどこで判断するんですか。

有本:まず、オンラインゲームは今後伸びる市場だと予想していました。その中でSeedCの良いところは、受託運営の事業を持っていて、それをしっかりと事業の柱にしていくんだという発想があったことです。

 僕はコンテンツ企業への投資に関して、必ずしも積極的でないんですよ。仮に1つのコンテンツがヒットしたとしても、そのブームが終わってしまったり、マーケティング戦略に失敗してしまったりすると大変なことになりますし、その次のコンテンツが成功する保証はどこにもないですから。ですからオンラインゲーム市場全体の伸びを追い風にしていけるようなビジネスモデルが必要だと思ったんです。

 先ほど崔さんから、いまだに韓国の方がサーバ関連の技術が進んでいるという話がありましたが、日本はゲームのシナリオやデザインの分野で進んでいる企業はあっても、オンラインゲーム事業の肝であるアフターサービスを提供できる企業がなかったんですね。だったらそこを補完できればコンテンツの善し悪しに左右されずに、安定的に伸びていけるんじゃないかと思いました。加えてオンラインゲーム先進国である韓国でコンテンツを集めることができるネットワーク、関西電力からの出資を引き出すような日本でのビジネスに関する理解などがありましたから、そういった点を複合的に評価しました。

日本ベンチャーキャピタル 西日本支社 ベンチャーキャピタリスト
藤本良一

神戸大学文学部英米文学科卒業。1987年野村證券に入社。野村證券には約11年在籍し、うち8年間は公開業務に従事、2社の株式公開(IPO)を担当する(いずれも野村證券主幹事)。1998年日本ベンチャーキャピタルに入社。おもな投資分野はIT・インターネット関連、大阪大学発ベンチャーなど。 「目標はクライナーパーキンスのジョン・ドーア」「ベンチャー育成は畑つくりから」を信条に活動し、泥臭い(ハングリーな)ベンチャー企業を好んで投資を行っている。大阪大学先端科学イノベーションセンターVBL部門客員研究員、三重県大阪事務所大阪ベンチャーサロンマネージャー兼務。

趣味:ガーデニングと昨年より始めたパラグライダー(はまっています!)

投資先:ネクストウェア(ヘラクレス:4814)、ビービーネット大和システム(東証1部:8939)夢の街創造委員会(ヘラクレス:2484)のほか、IT関係ではSeedC(オンラインゲーム)、ナチュラム(Eコマース)、神戸デジタル・ラボ(システムインテグレーター)、ゾイックス(証券データサービス)、メディアフュージョン(XMLデータベース)、IT以外ではN.A.gene(阪大発・ヘルスケア)、JAVA DD&A(洗車場チェーン)、エス・イー・アイ(リチウムイオン電池極板開発)、ワイ・シー・トイズ・ラボ(電子玩具)など

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