世界に挑戦するベンチャーはいかにして生まれるか - (page 4)

永井美智子(編集部)、田中誠2007年01月25日 08時00分
  • 一覧
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

勝屋:将来、どういうキャピタリストになりたいですか。

藤本:僕も有本さんと同じ考えで、世界に挑戦できるベンチャーを育てたいです。一番挑戦したいのはNASDAQに上場する会社を生み出すことですね。キャピタリストの中にはよく「シリコンバレーに行ってシリコンバレーの会社に投資して、向こうで上場させたい」という人がいますが、僕の今の夢は日本で投資した会社が世界の市場で上場することです。崔さんも日本から韓国、欧米に進出するというプロジェクトを準備されていますが、そういう発想で一緒に仕事をしたいと思いますね。

有本:VCはどこまでいっても黒子なので、経営者という主役の影でどこまで良い脇役になれるかがポイントですよね。主役になれないという部分がフラストレーションになることはあります。そういう意味では経営者になりたいという願望は確かにありますし、もともとVCに入ったのも経営者へのあこがれがあったからです。ただ今は、いざとなれば経営できるという能力を持ったキャピタリストになりたいというのが希望ですね。

勝屋:これからキャピタリストになりたいと思っている若い人にアドバイスをお願いします。

藤本:自分自身の付加価値を上げることが重要だと思います。自分が高いレベルにあれば高いレベルの人たちと巡り会えますから、謙虚な心を持ちながらも、高いレベルを目指して自分を磨いて欲しいと思います。

有本:結果だけを見ると「儲かった」「儲からない」という良くも悪くも派手な世界だと思いますが、実は地道な仕事だと思うんです。経営者と良好にコミュニケーションが取れる関係を維持しつつ、コツコツと企業価値を高める努力をして、その結果、IPOなどの果実を得るわけですから。

 また、金融のテクニックを駆使する仕事だという誤解があるのかもしれませんが、実際は人間としての自分の生き方をフルにぶつける仕事だと思います。新しい産業を育てることで、VCも、VCにお金を預けた側も、投資を受けた側も、そして社会全体もハッピーになれる。ある意味分かりやすい事業だと思うので、そういうことに興味を持てる人にはどんどん入ってきてもらいたいですね。

勝屋:SeedCは今後どういう会社にしていきたいと思っていますか。

:現実的な話と抽象的な話に分かれます。まず現実的な話として、これまで助けてもらった株主、社員、取引会社など、お世話になった人への恩返しをしなくてはいけません。一番分かりやすい恩返しは弊社が上場することですので、まずはそこを目指して頑張ります。

 ただ、会社から見ると上場は終わりでなくて新しい始まりなので、その後は世界に進出していきたいですね。ITが発達しているのは東アジアです。ですからオンラインゲームという文化を、韓国、日本、中国、東南アジアまで広げた上で、欧米に進出していきたいんです。産業革命が遅れただけで何千年もの歴史がある東洋圏が欧米から低く見られている感覚があるので、ビジネスの世界で戦争をしかけるつもりでやっていきたいと思います(笑)

 韓国には2006年10月に現地法人を作っていますし、オーストラリアにも2007年1月に法人を設立しました。

 それからもうひとつ、抽象的な話なんですが、今まで会社を経営してきて一番記憶に残っていることがあります。今はもうサービスを停止していますが、「アッピーオンライン」という弊社が初めて提供したオンラインゲームがありました。

 ある日僕の家に、娘さんがアッピーオンラインをやっているというお父さんから手紙が来たんです。そこには、娘は小学校2年で白血病である。あと1〜2年しか生きられない。娘は最初に男性キャラクターを選んで育ててしまったが、女性のキャラクターに変えてもらえないかと書いてありました。

 そのゲームは途中で性別を変えると、それまで持っていたアイテムや武器がすべてなくなってしまうので、彼女がそれをすると生きている間に元の装備に戻せないかもしれない。だから何とかしてくれないかという手紙だったんです。娘が本当に病気であることはいくらでも証明できるから信じて欲しいとも書いてありました。

 それで会社で会議をしたんですが、普通ではやっぱり無理なんですよね。その子だけ特別扱いをしてしまうとコミュニティが荒れてしまいますから。そこで、ゲーム全体で性別転換イベントというのをやることにしたんです。期間を決めて、その間に申し込んだ人は装備をそのままに性別を変えられるというイベントです。そうしたらそのお父さんから丁寧なお礼の返事が来ました。それは一生忘れられない出来事ですね。

 たとえ上場ができずに何年後かに会社がつぶれてしまっても、そういう感動をいつも創れる会社であれば、それは意味のあることじゃないかと思うんです。そういう抽象的なことと現実的なことを一緒にできるような会社になりたいですね。

藤本:「カーディナル・サーガ」というゲームでは、作家の中山千夏さんがゲーム内で経験したネット恋愛を本(「妖精の詩」飛鳥新社)にして出版したこともありましたね。

:そうですね。そういう事例をいくつも創れる会社ができればいいですね。

IBM Venture Capital Group ベンチャーディベロップメントエグゼクティブ日本担当
勝屋 久

1985年上智大学数学科卒。日本IBM入社。2000年よりIBM Venture Capital Groupの設立メンバー(日本代表)として参画。IBM Venture Capital Groupは、IBM Corporationのグローバルチームでルー・ガースナー(前IBM CEO)のInnovation、Growth戦略の1つでマイノリティ投資はせず、ベンチャーキャピタル様との良好なリレーションシップ構築をするユニークなポジションをとる。総務省「情報フロンティア研究会」構成員、New Industry Leaders Summit(NILS)プランニングメンバー、独立行政法人情報処理推進機構「中小ITベンチャー支援事業」のプロジェクトマネージャー(PM)などを手掛ける。

また、真のビジネスのプロフェッショナル達に会社や組織を超えた繋がりをもつ機会を提供し、IT・コンテンツ産業のイノベーションの促進を目指すとともに、ベンチャー企業を応援するような場や機会を提供する「Venture BEAT Project」のプランニングメンバーを務める。

ブログ:「勝屋久の日々是々

趣味:フラメンコギター、パワーヨガ、Henna(最近はまる)、踊ること(人前で)

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]