技術とサービスを組み合わせた「Googleモデル」に挑むフラクタリスト - (page 3)

インタビュー:西田隆一(編集部) 文:榊原大輔2006年10月11日 13時38分

--田中さんは、学生時代に電脳隊を創業し、ヤフーに売却して、また新しくフラクタリストを創業していますね。

 今回上場を果たしたものの、まだ会社の規模も小さく、成功したという感覚はないんです。まだ後ろを振り返って、起業をどうこう語れるということはないのですけれど・・・しいて言うなら、1996年からインターネットの成長の波に乗れたこと。これは大きいですよね。

 また、オンリーワンであることにこだわり、社会的に価値はあるけれども他社がやらなさそうなところに目を向けてきた事でしょうか。もちろん、それで市場に残れるとは限らないですけれども。

--電脳隊や、ピー・アイ・エムのメンバーはヤフーに残っている人も多いですよね。そんな中、田中さんは再び起業の道を選ばれた。これは、田中さんの独立意識が強いからでしょうか。

 独立意識は強いでしょうね。ヤフーに残っていれば、経済的なメリットは大きかったんだろうとは思うんです(笑)。でも、向いてなかっただろうとも思うんですよ。

 新しいビジネスシードを見つけて、インキュベーションしていく。私の場合、やりたい思いや情熱が、そちらに向いているんです。自分の持ち味は、会社のスキームを超えて何かを創造していくためのチームを作るところにあると思っています。

 電脳隊でピー・アイ・エムの発足を働きかけたときもそうですね。イエルネット(当時。2002年11月30日で業務停止)をはじめとして、いろいろな企業や投資家を集めて会社を作ったわけですから。ビジネスの「最初のひところがし」が得意なんだと思います。

 ひるがえって現状を考えてみると、このフラクタリストという会社も規模が大きくなってきて、「最初のひところがし」では通用しなくなる局面に入ってきた。そういう意味では、この会社も私も、今からが正念場なのだと思っています。

  電脳隊はピー・アイ・エムと合併し、ピー・アイ・エムはヤフーが買ってくれた。「倒産せずにヤフーに売れたね、良かったね」という事になったのですけれど、逆を言えば継続した成長企業にはなれなかったわけですよ。

 その当時、次のことを考えた私は、「今度はすぐに売却せず、腰をすえて会社を作ろう」と思った。これが、今のフラクタリストです。

--現在の日本のネット関連企業にはオンラインサービス事業者が多いですが、フラクタリストは技術にフォーカスしているのが特徴的ですね。

 実は、電脳隊とピー・アイ・エムは、「技術」と「サービス」という関係なんです。電脳隊がモバイルインターネットのインフラ普及を支援し、それができたので、ピー・アイ・エムでサービスを展開しようと考えました。

 フラクタリストも同じです。現在は通信関連のコア技術を中心に据えていますが、そのコア技術を活用した、便利なサービスを提供していくための方策は、絶えず模索しています。どういう形でサービスレイヤに関わっていくのが最適なのかという点も含め、現在は多方面でのあり方を模索しているところですね。

 サービス事業を展開する場合には、現在当社が取り組んでいるモバイル事業やNomadicNode事業で培った技術が生きてくるだろうと考えています。NomadicNodeの技術で構築したネットワークの上で、モバイル事業で開発をしたソフトウェアを動かす。その上に、生活に密着したコンテンツや情報の流通、サービスの提供、広告の配信といったことが起こる。

 世の中の大きな動きを予測して必要な技術を開発し、それを普及させるためのサービスを展開する--このやり方が正しいのかどうかは分からないし、その答えはないと思います。ただ、いずれにせよ、技術は使ってもらえることが肝心です。また、それが業績を上げるための方法だとも思っています。技術が普及した時点でその技術を生かしたサービスを展開するというビジネスモデルにすることが大切ですね。

 コア技術を持っている会社というのは、実は結構たくさんあります。けれども、その業績には差がある。比べてみると、途中でビジネスモデルを転換できたかどうかで大きな差が出ています。お手本はGoogleですね。Googleは検索エンジン技術から事業を始め、現在はその技術をベースとした検索連動型広告で大きな収益を得ているわけです。

 フラクタリストはこういった戦略が取れるような競争力のある企業になりたいと思っています。日本にはあまり多くないタイプの企業かもしれませんが、挑戦していくつもりです。

--3年後、5年後の目標はありますか。

 NomadicNode事業は年率50%成長、モバイル事業は市場成長と同じ同20%成長を目指しています。また、ここに新規事業が加われば、5年以内に売上高が10億円規模になる可能性もあります。

--先ほどからサービスという言葉が何度も出てきていますが、今年の2月14日付けで、ご自身のブログに書かれていた「無線LANによるIP端末(中略)でキラーアプリケーションが何かということなんですが、これを見つけたものがワイヤレスブロードバンドでイケてる会社になるのだろうと思います」という言葉と関連していますか。

 キラーコンテンツになるだろうというサービスのイメージはいくつか見えているのですが、これらは企業秘密です(笑)。ただ、その中にはNomadicNodeを使っていくものもあるでしょうね。

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