技術とサービスを組み合わせた「Googleモデル」に挑むフラクタリスト - (page 2)

インタビュー:西田隆一(編集部) 文:榊原大輔2006年10月11日 13時38分

--田中さんがかつてモバイル業界で活躍されていたこともあり、フラクタリストにはモバイルのイメージが強いですが、それだけにとどまらない、ネットワークインフラを活用するためのコア技術を開発、提供しているということですね。

 確かに、当社の主軸の1つであるモバイル事業では、携帯電話向けのサイト構築、運営などを手がけています。

 ただ、本質的なところに立ち返れば、ネットワークをいつでもどこでも簡単に最大限に活用できるようにしていくのが当社の役割だと考えています。インフラ部分に問題があるなら、そこをやる。ユーザーの利用シーンに問題があるなら、そこを解決する。「この技術に特化します」という会社にするつもりはあまりないですね。

 NomadicNode事業は「ネットワークがすべてIP化した社会で、出先の携帯端末から自宅の機器を自由自在に使えるようにできたら便利で面白いよね」というところを突き詰めたら、通信のコア技術の開発に到達したということなんですよ。

--中国でも事業を展開していますね。

 まず、なぜ中国か?という話から進めますね。当社は大きな価値のあるソフトやサービスを、より多くの人に使ってもらいたいと考えています。その観点から、中長期に考えると中国市場は外せないんです。

 日本の携帯電話市場には8000万のユーザーがいます。おそらく、世界最先端の市場でしょう。しかし、ユーザー数で言うなら、中国は4億人と圧倒的な規模です。すでに、携帯電話端末の分野では、中国市場でトップシェアを取った企業が世界市場でも勝つという状況になってきています。例えば、Samsung Electronicsは中国市場で大きなシェアを取ったことで、世界市場でも大きなポジションを取れたわけです。

 モバイル領域のソフトウェア分野も間違いなく同じことが起きるでしょう。そう考えると、当社の柱であるモバイル事業とNomadicNode事業の展開に向けた足がかりを作っておくためにも、中国でビジネスをできる状況を作っておく必要があったのです。

 中国市場には、2001年くらいから興味を持っていました。ただそのとき、コンテンツサービスはやめようと判断しました。日本のコンテンツを持っていっても、市場や文化が違うからうまく行かないだろうと考えたのです。また、当時の中国における携帯電話の技術水準は、まだショートメッセージングサービスが流行しているレベルでした。日本の最先端技術を持っていくのは、少し時期尚早だろうという気がしました。

 そこで、現在中国で行っている事業--モバイルマーケティング事業に踏み出したんです。サイトや店舗に集客したい、商品の販売促進活動をしたいというニーズはどこにでもあります。これをモバイルを使って行う。

 たとえば、ショートメッセージを使ったシリアルキャンペーンがあります。製品にシリアルナンバーを入れておいて、それをショートメッセージを使って携帯電話から送ってもらうと、簡単なゲームに参加できるといったものですね。当社は、日本でもモバイルマーケティング事業を展開していましたから、そこで得た各種のノウハウを流用できると考えたのです。

 さらに、日本の市場も研究しました。日本のモバイルマーケティングで成功している会社はどんなモデルを使っているだろうかと。調べていくと、キャリアが運営するポータル、つまりトラフィックのあるところに広告を配信するメディアレップのモデルが一番成功しているなと分かったのです。そこで、これを中国で展開してみようと考えました。

 販促のソリューションを提供しているうちに、一緒に仕事をしていた中国移動通信(China Mobile:2億7000万ユーザーを持つ、中国ナンバー1の携帯電話事業者。これは、世界最多のモバイルユーザー数でもある)と組んで、このキャリアレップ事業展開できることになりました。

 NTTドコモで言えば「i-mode」というサービスに対応するような「移動夢網( Monternet)」というChina Mobileのサービスがあるのですが、これを広告媒体化して一緒に売りませんかと持ちかけてみたのです。2005年暮れにライセンスを取得しました。現在、中国での中核事業は、モンターネットのキャリアレップです。これはChina Mobileとの共同事業です。

--NomadicNodeの海外展開の予定は。

 もちろん積極的に考えています。現在は、北米でベンチャー企業に少しずつ採用され始めています。中長期的には現地拠点を作り、ミドルウェアを北米企業に提供していくことも検討しています。

--社内の体制について聞かせてください。開発は社内でしているんですか。

 コア技術は社内で開発していますね。インテグレーションなどは外部技術者に参加してもらうこともあります。

 会社内での私の仕事は、アイデアを出して会社のビジョンを固めることですね。例えば、「すべてがIPネットワークでつながる世界はどうあるべきか?」などといった大きな方向性を考え、そこからの事業展開を考えていきます。個々のサービスに関するアイデアは現場からあがってきたものを積極的に採用し、製品化につなげています。私は技術者ではありませんので、将来を見据えて新しい技術を発掘するのが役割といったところですね。

田中祐介氏

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