群衆(crowd)にアウトソースして何かを作り上げることを意味する「クラウドソーシング(crowdsourcing)」という言葉が話題になっている。米CNET Networksの運営するRelease 1.0には、クラウドソーシングを試みる企業Cambrian Houseの姿が紹介されている。
Cambrian Houseという企業は、起業における従来の投資手法を変えようという、一風変わったインキュベーターである。同社のモデルは、アイデアの発案とソフトウェア開発作業をインターネットユーザーにアウトソーシングするとともに、そのプロジェクトの利益を協力したユーザーに対して還元しようというものだ。
同社の最高経営責任者(CEO)Michael Sikorsky氏(33歳)がこのアイデアを思いついたのは、アルバータ州カルガリーでの現役引退生活(同氏は、自らが立ち上げた企業としては5社目であった企業向けアプリケーション開発企業Servidiumの売却に成功していた)が1年を過ぎたころだった。Cambrian Houseの最もわかりやすい特徴はその製品創造戦略だが、Sikorsky氏は「あなたがより優れたネズミ捕りを作ったとしても、争って買おうとする者などいない」と述べている。Cambrian Houseの特徴は、実に市場テストを行う仕組みを持っていることにあるのだ。
とはいえ、同社における製品の選択と製作のプロセスもユニークだ。同社は自社のWebサイトの訪問者に対して、製品のアイデアを提案することを奨励している。そしてアイデアの提案者は、そのアイデアを利用した製品によって生み出される利益の一定割合を受け取ることができるとされている。
では、アイデアはいかにして製品化されるのか。アイデアはまず、一般の人も参加できる投票にかけられる。すると人気のアイデアは上位にくる。Cambrian Houseは、人気を集めたアイデアを取り上げ、その市場テストを行う。同社は「Chameleon」と呼ばれる独自のシステムを用いて、プロトタイプを市場で迅速にテストする。このシステムでは、検索広告の単語を選択し、ウェブサイトのさまざまなレイアウトを試し、価格および地域を考慮したA/Bテストを行う。Sikorsky氏によれば、このシステムは他の手法に比べて、アイデアの市場性をオンラインでより迅速に確認できるうえに費用対効果の点でも優れているという。このシステムの詳細を見せてもらうことはできなかったが、Sikorsky氏の言うように効果的であれば、同社に集まる大量のアイデアをうまくフィルターできるものとなっているはずだ。
このフィルターを通過したアイデアはコーディングコミュニティに提供され、開発工程に入る。そしてこのコーディングは、最近台頭してきている「クラウドソーシング」開発モデルを用いて行われる。なお、この段階で貢献した人々にも、完成した製品によってもたらされる利益が分配されることになっている。各プロジェクトには、プロジェクト開発の中心となる(例えば、コードを登録する)少人数の人々がいる。こういった人々は、現段階ではCambrian Houseの社員であるが、同社は今後のプロジェクトにおいて、この役割をコミュニティメンバーに割り当てる可能性がある。なお、同社は開発工程の管理にSourceForgeを使っている。
立ち上げられたプロジェクトの分け前は社内外の人間で構成される評議会によって分配される。この分け前は「ロイヤルティポイント」と呼ばれ、このロイヤルティポイントにしたがって、各製品ごとにその売上総利益の100%が分配されることになる。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス