Googleは図書館の蔵書をスキャンするプロジェクトを進めているが、論議を呼ぶこの事業に、新たなパートナーとしてカリフォルニア大学(UC)が加わった。同大学はすでにYahoo、Microsoft、Internet Archiveが設立したグループとも、同様のプロジェクトを開始している。
「Google Book Search」のプロダクトマネージャー、Adam M. Smith氏は米国時間8月1日、取材に答え、Googleはカリフォルニア大学の10カ所のキャンバスに点在する100を超える図書館に収蔵された数百万冊の書籍をスキャンしてデジタル化し、これらの蔵書を完全に検索可能にする計画だと語った。
Googleは2005年から、米国議会図書館、オックスフォード、ハーバード、スタンフォード、ミシガンの各大学、さらにはニューヨーク公立図書館に保管されている書物から、パブリックドメインとなった本だけでなく、著作権で保護されている本もスキャンしてデジタル化し、検索可能にする取り組みを続けている。
一方で、UCはOpen Content Alliance(OCA)に参加し、こちらでも蔵書のデジタル化に着手している。OCAは、非営利団体のInternet Archive、およびYahooとMicrosoftが共同で設立したものだ。
UCの学校システムのデジタル化計画に携わるCalifornia Digital Library(CDL)の戦略コミュニケーションマネージャー、Jennifer Colvin氏は、ライバル関係にあると思われる2つの書籍デジタル化プロジェクトと連携しても、学校のシステムに矛盾や問題は起こらないと主張する。
「われわれはOCAとのパートナーシップを重視しているが、 公的機関として、大学の所蔵する資料をできるかぎり幅広く自由に利用可能にすべきだと考えている」とColvin氏は言う。
Colvin氏によれば、具体的な条件は明らかにしなかったものの、GoogleとUCの取り決めでは、Googleがスキャンしたすべての蔵書のコピーをとって保管し、UCもコピーを保管することになるという。スキャン作業はできる限り早く開始する予定だが、場所や方法の詳細はまだ検討中とのことだ。
Googleは、スキャンした本のコピーをパートナーの図書館と共有しているが、コピーの利用には制限を加えている。例えば、スキャンした本の検索はGoogleの検索インデックスでは可能だが、ほかの検索エンジンからはできない。
OCAは、営利目的で行われているGoogle Book Searchに対抗するオープンソースのプロジェクトとして結成された。OCAでは著作権への対応も異なっており、デジタル化する本を著作権が切れたものに限定することで、Googleを悩ませている著作権の問題を回避している。
「Google Books Library Project」ではあらゆる本をデジタル化する一方で、まだ著作権で保護されている本は、2、3行の抜粋しか見ることができないよう制限されている。それでも、Googleは、このプロジェクトが著作権を侵害しているとして、著者と出版社を代表するグループから訴えられている。Googleはこの主張を受け入れていない。
CDLに所属するUCの司書、Dan Greenstein氏は「もちろん、われわれはパートナーである出版関係者の心情と利害を気にかけており、 法律を順守して取り組んでいくつもりだ」と述べた。
Internet Archiveの設立者Brewster Kahle氏は、UCが引き続きOCAとの取り組みを続けることに歓迎の意を示す一方で、デジタル化した本の配布、共有にGoogleが制限をかけることにUCが同意したことについては、「図書館システムを私企業のもとに置くものだ」としてUCを非難した。
「UCは事実上、自分たちの図書館を一民間企業に与えたことになる。Googleが設けた制限を公的機関が受け入れることは、図書館を今後もオープンな存在としていくとうえではプラスにならない」とKahle氏は語った。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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