「SOAは単一のプロジェクトでROIが向上するものではない」--SOAに現実的に取り組むBEA Systems

田中好伸(編集部)2006年07月20日 02時36分

 「SOA(サービス指向アーキテクチャ)は、これまでの“場当たり的なアーキテクチャ”の結果として“凍結された企業資産”となってしまった情報システムを柔軟に変化させることができる」――。BEA Systemsでワールドワイドマーケティングで副社長を務めるJeff Veis氏は、昨今注目を集めるSOAがどのようなメリットをもたらすのかを、このように説明している。

 企業向けインフラストラクチャソフトを開発するBEA Systemsは7月12日から2日間、オーストラリアのシドニーにて「BEA APAC Analyst & Media Summit」と呼ばれるイベントを開催した。このイベントは、アジア太平洋地域のアナリストやメディア向けに、同社が現在取り組んでいる事業内容などについて説明するというものだ。今回は初めての開催となる。

隔たりを埋めるSOA

 同社がここ最近力を入れているのが、SOA関連の製品群だ。SOAとは情報システム全体を“サービス”の集合体としてとらえ、環境の変化に合わせて、情報システムを柔軟に変化させるというものだ。

Jeff Veis氏 「既存の情報システムは、凍結されたものになってしまっている」と語るVeis氏

 Veis氏は、イベントの講演の中で冒頭のように語っている。そして従来の企業の情報システムについて、「場当たり的なアーキテクチャの結果によって、部署ごとにシステムが構築され、ほかの部署との連携が取れなくなっている。こうして、システムはサイロのようになってしまい、企業全体にとって情報システムは、凍結された企業資産となってしまっている」と説明する。ここで言う凍結された企業資産のままでは、企業を取り巻く市場環境の変化にあわせて情報システムを変化させることができないからだ。

 「凍結された企業資産はSOAによって変化させることができる。SOAによって、ヒトとビジネスプロセス、アプリケーション、システム間の隔たりを埋めることができるようになる」(Veis氏)

BEAが目指す「Business LiquidITy」

 最近ではBEAに限らず多くのベンダーがSOAに関連した製品を提供しているが、BEAではSOAをもとにして「Business LiquidITy」というビジョンを提唱している。これは、同社が提供するSOAプラットフォームを利用して、情報システムを含む企業全体を変化させ、最適化することで、企業のコスト構造を改善し、新しい収益源を生み出そうというものだ。

 同社がBusiness LiquidITyを実現するうえでポイントとしているのが、(1)異種混合環境(2)シームレスな改革(3)ブレンドソリューション(4)SOAに対する最適なアプローチ――の4点である。

目の前の“現実”を受け入れる

 (1)の異種混合環境は、現在企業が稼働させている情報システムには、UNIXやLinux、Windowsなど異なる種類のOSが混ざり合っている状況、あるいはパッケージをもとにした情報システムとゼロからスクラッチで開発した情報システムが混ざり合っている状況を“受け入れる”ということだ。

 他社でも、異種混合環境下でもシステムを統合する製品を開発・提供しているが、BEAの場合は「BEA AquaLogic」シリーズと「BEA WebLogic」シリーズで実現できるとしている。WebLogicシリーズは、Javaアプリケーションを開発、稼働させるための基盤となるソフトウェア群だ。一方のAquaLogicシリーズは、SOAによるシステム統合のための基礎となるソフトウェア群である。

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