景気が回復基調になるにつれ、売り手市場となってきた就職戦線。大手企業も積極的に採用活動に力を入れはじめた中、ベンチャーはいかにして優秀な人材を確保しているのか。5月に開催されたNew Industry Leaders Summit(NILS)のセッション「The war for talent」では、サイバーエージェント 代表取締役社長の藤田晋氏とワークスアプリケーションズ 代表取締役最高経営責任者の牧野正幸氏が、それぞれの人材確保戦術について語った。
同セッションでモデレーターを務めたのは、グロービス・マネジメント・バンク 代表取締役の岡島悦子氏だ。「採用は常に最優先課題」と声をそろえる2名のスピーカーに対し、岡島氏がまず最初に投げかけた質問は、「職務経験があり、即戦力として使える人材と、企業カルチャーには合うかもしれないが、スキル不足に思える人材のどちらに魅力を感じるか」という点だ。
サイバーエージェントの藤田氏は、「会社のビジョンに対する共鳴度が低い人はその段階で対象外だ」と話す。会社の雰囲気作りを重視している藤田氏にとって、企業マインドが受け入れられる人であるかどうかがまず採用の第一条件となるわけだ。
即戦力となる人材はもちろん魅力的ではあるが、藤田氏は「インターネットビジネス自体が新しい分野であるため、あまり即戦力はいない」と話す。起業前に人材紹介会社でのサラリーマン経験もある藤田氏は、「ベンチャー企業はどこでも採用に苦労するもの。それは覚悟しておいた方がいい」と述べた。
一方、ワークスアプリケーションズの牧野氏は、「会社のことが好きでなくてもいいし、経験がなくてもいい」という考えだ。「どんな仕事でも、キャッチアップしてやろうというやる気と、能力や頭の良ささえあれば、どの領域でもプロになれる」と牧野氏はいう。
「経歴があればできるかというとそうではないし、ビジョンは入社してから植え付ける自信がある。会社のビジョンや文化を伝えるための研修は、経験者でも未経験者でもある程度必要で、どうせ教育しなくてはいけないのであれば、地頭の良い人材の方が良い。採用は人数枠で考えるのではなく、欲しい人材の基準を絶対値として動かさないことにしている」(牧野氏)
とはいえ、売り手市場の就職戦線、企業側からある程度提供するものがなければ採用も厳しいのではないだろうか。こうした懸念から、モデレーターの岡島氏は「人材を魅きつけるポイントとは何か」と問いかけた。
藤田氏は、「表彰制度を設けたり、福利厚生制度を充実させたりしている」と話す。「採用そのものにコストをかけるよりも、せっかく育てた人を辞めさせないためにコストをかける方がいい」というのが藤田氏の考えだ。そのため、退職金制度は導入していないが、オフィスの最寄駅から2駅以内に住む社員に対して家賃補助を支給する「2駅ルール」などの制度も用意している。「ネットバブルがはじけた後、やはり長期的に働ける環境が重要だと考えた」と藤田氏はいう。
一方、牧野氏は物理的なものではないが、「成長できる機会とフィールドを提供している」と話す。「入社する社員に対して、『成長できる』という点は約束している。また、退社する人間はあまりいないが、辞めた人の中には非常に優秀で、独立して活躍している人もおり、応援している」(牧野氏)
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