Ajaxが本当に「使える」領域とは?--UIEvolution中島氏が講演

永井美智子(編集部)2006年06月26日 08時00分

 Web 2.0技術の1つとして注目されるAjax。Googleマップをはじめとして新しいインターネットサービスに数多く利用されるようになっているが、どういったサービスで最も効果的に利用できるのだろうか。6月22日に東京都内で開催されたJavaに関するセミナー「Java World DAY 2006」において、UIEvolution CEOの中島聡氏が講演した。

 中島氏はまず、ソフトウェア業界では現在、パッケージからウェブアプリケーションに移行する流れが起きていると指摘した。これは単なる技術革新ではなく、ビジネスモデルの変化を伴う大きな動きであるがゆえに、Microsoftをはじめとした既存のソフトウェア事業者に大きな戸惑いと危機感をもたらしているという。

 これまでもAmazonをはじめとして、ウェブアプリケーションを活用したインターネット企業は数多く存在した。しかしこれまでのウェブアプリケーションでは、レスポンスや使い勝手の面で制限があり、特に企業内アプリケーションはパッケージソフトが優位だった。ところがこの使い勝手の制限の壁を打ち破る技術が出てきた。それがAjaxだというのだ。

第2世代のウェブアプリケーション 中島氏が講演で示した、パッケージソフトとウェブアプリケーションの関係図

 AjaxとはAsynchronous+Javascript+XMLの略で、JavascriptとXMLを使ってデータを非同期に通信する技術を指す。ユーザーがリンクをクリックしてページを切り替えるこれまでのサービスと異なり、ユーザーの操作とは非同期にデータを読み込むことでユーザーにページの読み込みを待たせるといったことをしないのが大きな特徴だ。このため、Ajaxを使ったサービスではユーザーの使い勝手が向上する。Ajaxを使ったサービスを提供している企業の代表格がGoogleで、最近ではブラウザ上で表計算ができるAjaxを使ったサービス「Google Spreadsheets」などを提供している。

 パッケージソフトの代表格ともいえるMicrosoftが、現在Googleを脅威ととらえてOffice Liveのような新しい取り組みを進めているのは、Ajaxなどを使うことでウェブアプリケーションでもパッケージソフト並みのことができるようになっているためだと中島氏は指摘する。Microsoftはこれまでパッケージを販売して収益を上げてきたが、Googleは同様のサービスを無料でユーザーに提供してしまう。さらに、ウェブアプリケーションならではのサービスを組み合わせて、これまでのMicrosoftのソフトではできなかったことを可能とするようなサービスが出てくる可能性もあるからだ。

中島聡氏 UIEvolution CEOの中島聡氏

 中島氏は1990年代にMicrosoftでブラウザの開発に携わった経歴を持つ。当時Microsoftを脅かしていたのはNetscapeだった。「ビル・ゲイツは当時からウェブアプリケーションの脅威は認識していた。Microsoftが何もしなかったらNetscapeがWindowsに代わるプラットフォームになっていた。だからこそ、Internet Explorer(IE)を開発し、これはものすごくうまくいった」(中島氏)

 ただしウェブアプリケーションが普及すれば、OSに関係なくサービスが利用できるようになってしまい、OSの価値が下がってしまう。これを恐れた幹部が「IEはOS(ビジネス)を守るために使うべき」と主張し、Microsoftがウェブアプリケーションビジネスを推進することはなかった。

 当時から中島氏はウェブアプリケーションを推進していたといい、「いまのMicrosoftの姿は悔しい」と話す。ただし一方で、「この経営判断で1996年から2000年ごろまでMicrosoftが大きな収益を上げたことも事実」とした。

 今後、Ajaxを開発者はどう使うべきなのか。中島氏は、コンシューマー向けサービスで本格的に使うのはまだ早いと警告する。Ajaxを使ったサービスのビジネスモデルがまだ見えていないためだ。「Googleも自社の中核ビジネスである検索ではあまりAjaxを使っておらず、(Googleマップなどで)実験的に使っているにすぎない」(中島氏)。また、コンシューマー向けの場合はユーザーが使うブラウザの種類が多岐にわたっており、すべてのブラウザに対応するためには大きな労力が必要になるとも指摘する。

 一方、可能性があるとするのは企業向けアプリケーションの分野だ。企業内であればブラウザを統一することもさほど難しくない。ただし、既存のパッケージソフトと同じ機能だけでは、既存ソフトに勝つことは難しい。ウェブならではの機能を盛り込むことでビジネスチャンスが生まれるとした。

 さらに、Microsoftが2007年に提供する新OS「Vista」が、企業にウェブアプリケーションの採用を促す可能性まであるという。「企業にとって社内PCのOSを変更するのは大仕事だ。OSを移行させるだけでなく、合わせて新OSに対応したアプリケーションをすべてのPCにインストールする必要がある。そうなると、『本当にOSを変更する必要があるのか。ウェブアプリケーションでいいのではないか』というようになる」(中島氏)と指摘した。

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