新たなウェブ開発技術がPCソフトウェアの現状を揺るがし、デスクトップとウェブアプリケーションの境界を曖昧にしつつある。
ここ何年もの間、コンピュータ業界では、デスクトップアプリケーションが特定のオペレーティングシステムと関連付いていることが常識となっていた。だが、過去8年間にわたって標準化が進められてきた開発技術AJAXが、より洗練されたウェブアプリケーションインターフェースを実現し、こうしたスタイルを変えようとしている。AJAXの支持者らは、こうした傾向が進展すれば、強大なマーケットリーダーであるMicrosoftの「Office」などのデスクトップアプリケーションの支配力をそぐことができるとして、期待を募らせている。
メッセージング技術を提供する新興企業ZimbraのプレジデントScott Dietzenは、「これはまさに革新が叫ばれていた分野だ」と述べている。「現時点では、Microsoftに挑戦しようという企業は存在しない。わたしたちは、そんな現況を変えようとしている」(Dietzen)
注目を集めるZimbraは今週、サンフランシスコで開催された「Web 2.0 Conference」においてビジネスモデルの概要を発表し、1600万ドルに上るベンチャー資金を確保したことを明らかにする予定だ。カリフォルニア州サンマテオに本拠を置く同社は、電子メールサーバソフトウェアのオープンソース版を11月にもリリースすると話している。ユーザーは年間登録料を支払ってアップデートおよびサポートを受けられるほか、有料のハイエンドバージョンも用意されている。
Zimbraのほかにも、AJAXに力を入れる企業は増えている。AJAXは「Asynchronous JavaScript + XML」の略称だが、これは単なる覚えやすい短縮語の域を超えつつあると、Zimbraは考えている。AJAXの開発形式においては、プログラマはJavaScriptおよびXMLに代表される数々の標準技術を用いて、アプリケーションを記述する。ウェブ企業や大手ソフトウェアプロバイダは、AJAXによってデスクトップコンピュータのGUI(Graphical User Interface)とウェブの利点を一体化させれば、PCソフトウェア産業は再び勢いを盛り返すのではと考えている。
AJAX方式のアプリケーションは市場に参入したばかりで、これがすぐにOfficeに取って代わることを期待する者はむろんいない。Microsoftは、デスクトップソフトウェア市場で90%以上というシェアを長年維持しており、また同社によれば、Officeや関連ツールを扱うInformation Worker部門の売上は、同社の2005年度総売上の4分の1以上に当たる110億ドルを突破しているという。
しかしここへ来てZimbraのような企業が、長らく不変と考えられてきたマーケットに食い込むための道を切り開こうとしているのだ。
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