プラットフォームプレーヤーとの付き合い方として、大きくは2つの選択肢がありうる。ひとつには共存を狙うものであり、GoogleAPIを活用するなどプラットフォームを利用して更なる価値を自らに付加するというものだ。そして、もうひとつとは、Googleと対抗することを選ぶことだ。
前者については、いまさら何か言うものではあるまい。しかし、後者に関しては、以前も言及しているが、真正面からの対抗は意味がない。すなわち、前述したとおりネットワーク外部性が作用するため、たとえ映像や家電向けに対Google的な検索エンジンを作るというガチンコ対決をするより、何らかの形で「土俵を変える」ほうが重要だろう。
というのも、ウェブではなく、ネット3.0(「2.0」はウェブに譲ろう)と言ってもいい世界が、僕らの身近なところに広がっている。ちょっと前のファッド(流行語)で言えば「ユビキタス」という視点だ。そう、それはネットとリアルとの接点であり、直接にはウェブを介さなくともいい世界が実は僕らの生活時間においては依然として圧倒的な広がりを持っているのだ。そこでは、例えば支払いシステムに関していえば世界に冠たる(?)iモードに代表されるケータイやFelicaを利用した決済の仕組みが存在する。
ネットではなく、リアルとの接点こそが競争優位のきっかけを提供してくれる可能性が大きい。とはいえ、安易にリアルとの接点をウェブという検索可能な世界に変換してしまえば、土俵を変えた効果は無効化され、Googleなどすでに世界を手にしているプラットフォームプレーヤーの軍門に下ることになる。そして、Googleはリアルとの接点の世界にじわりじわりと近づいてきている(現在、Googleと提携した携帯電話キャリアも存在するが、その提携の範囲によっては、それほど大きな意味は持たないかもしれない)。
だが、情報家電に関しても見ても、DLNA(デジタル・リビング・ネットワーク・アライアンス)など仮想的に閉ざされたネットワーク=フェアユース空間と開かれたネットワークとのつなげ方を工夫すれば、プラットフォームの持つ意味は変わってくる。Googleなどのプラットフォームとコンテンツ流通配信部分をうまく棲み分けることで、まさしくGoogleなどのサービスにフリーライドすることが可能になるからだ。
Googleというプラットフォームプレーヤーには、ある程度まで譲らざるを得ない部分は大きい。そして、支払いサービスの提供開始は一部のプレーヤーにとっては壊滅的な運命を意味することになるかもしれない。しかし、支払いサービスの提供開始も想定の範囲であるし、ことさらの偶像化によって、僕達自身の想像力や起業力をむやみに弱体化させてしまうことを是としないことこそが重要に違いない。リアルな世界との接点=ウェブ2.0をリアルな現実に拡大することで新たに見えてくる、ネット3.0の世界をこそ語るべきではないか。
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