米国で、インターネットを利用してリッチコンテンツを楽しめる環境が整備されつつある。そこでは、映画をはじめとしたハイエンドな視聴体験を提供する本格的なプロフェッショナルコンテンツよりも、アマチュアが制作する映像(CGC:コンシューマー生成コンテンツ)などのショートコンテンツに注目が集まる傾向が強い。
4月24日から27日までラスベガスで全米放送協会のイベント「NAB2006」が開催される。依然として全米放送協会の略称「NAB」を冠しているものの、実質的にはエレクトロニクスメディア全般のトレードショウとみなされるようになって久しい。今年も放送業界は当然のこと、急速にリビングルームに近づくIT業界やハリウッドなどのコンテンツ業界の面々が集うイベントになるだろう。
NAB2006のサイトを見るとわかるが、今年のホットトピックスは「IPTV」と「MoTV(Mobile TV)」になるはずだ。すなわち、ブロードバンドを用いた映像配信サービスと、モバイル網を用いた映像配信サービスであり、共にインターネット技術が前提となっている。
前回も書いたように、米国でのブロードバンドは日本と比べてかなり「遅い」。それでも、ブロードバンド利用は全米の37%の世帯にのぼり、インターネット経由での映像視聴は一般化しつつある。
米オンライン出版社協会(OPA)の調査によれば、インターネットで映像を視聴している人のうち5%が恒常的に視聴をしており、4分の1は1週間に1度以上視聴する習慣を持っているという。
人気があるのは、ニュース、おもしろ短編映像、音楽クリップ、映画の予告編、気象情報と続く。全般的に短い映像ばかりだ。昨今人気のAddictingClips.comやYouTubeといった映像投稿サイトやMySpaceの中の映像コーナーなどに集まるCGCが、企業が提供するニュースや音楽クリップなどのプロフェッショナルコンテンツと並んでで健闘しており、それらを用いたプロモーション手法の開発が盛んになっている。
一方、携帯電話サービス「後進国」という地位に長らく甘んじてきた米国でも、この夏頃からネット接続サービスが本格化される。
これまでは、米国の携帯電話事情は日本と大きく異なっていた。EV-DOやGPRS といったパケット通信方式を組み込んだ、Windows MobileなどをベースにしたPDA型の携帯電話端末(「スマートフォン」と呼ばれることが多い)でネット接続するしかなかった。
しかし、今後、スマートフォン以外の端末でもiモード的なサービスの利用が可能になっていくという。例えば、携帯電話会社は競って音楽ダウンロードサービスを開始しており、それらを利用できる端末は必ずしもスマートフォンに限定されていない。業界2位のVerizonは自社開発のサービス、vCast Musicを本年1月から開始し、首位のCingularはAppleのiTunesに対応した携帯電話端末を販売しているが、それらはいずれもスマートフォンではない。
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