インターネットを使ったサービスやコンテンツといっても、PC向けのインターネット業界と携帯電話向けのモバイル業界では、その主要プレイヤーやビジネスモデルは大きく異なる。そこで、「インターネット業界は詳しいけれどもモバイル業界のことはよくわからない」という人に向けて、モバイル業界の現状を紹介していく。その第一弾として今回は、モバイルサービスやサイトの運営に欠かせなくなったモバイル広告の市場について、主要企業の動きを中心に見ていくこととする。
一般サイトがモバイル広告市場を牽引
まず、モバイル広告市場の全体的な状況を押さえておこう。モバイル広告として、これまで最も大きな存在だったのはメールを使った広告だ。ダイレクトメールのように、メールそのものが広告である場合と、メールマガジンなどに広告が掲載される場合の2種類がある。ユーザーが常に手元に持っている携帯電話に向けて、企業が情報をプッシュできるため、効果的に情報を伝えられるとして広告主の人気を集めている。
写真:一般サイトの代表格の1つ、「Yahoo!モバイル」。テキスト広告だけでなく、写真のようなバナー広告も表示される |
ただし最近では、第3世代携帯電話(3G)による携帯電話の通信速度の上と、パケット定額制の導入でモバイルサイトの利用も増えてきたため、サイト上でのテキストやバナーの広告も増えている。電通の調査によれば、「2005年ごろから一般サイト(公式サイトではないサイト)へのアクセスが急激に増えており、これに伴ってモバイル広告市場が伸びている」という。
実際、NTTドコモが開示した2006年2月のiモード利用状況を見ると、movaユーザーがiモードを使ってアクセスするサイトの内訳は公式サイト60%、一般サイト40%であるのに対し、FOMAユーザーは公式サイト30%、一般サイト70%と大きく逆転している。
「かつてはPCのISDN時代のように、目的のサイトだけを見てすぐ接続を切るような形だった。しかし定額制の導入でユーザーがさまざまなサイトを見回るようになり、今までは見られていなかったような一般サイトのアクセスが伸びた」(電通)
この状況を見越した企業の動きもある。NTTドコモは3月27日、一般サイト向けの広告を主に取り扱うシーエー・モバイル(CAモバイル)と資本提携し、同社の株式の10%を18億円で取得すると発表した。また、電通も子会社の電通ドットコムが運営する電通ドットコム第一号投資事業有限責任組合を通じて、CAモバイルに出資している。ドコモと電通はiモード向けの広告を取り扱うディーツーコミュニケーションズ(D2C)を共同で設立しているが、D2Cは一般サイト向けの広告の取り扱い量は少ない。このため、CAモバイルに出資することで一般サイトと公式サイトの両方を押さえる構えだ。
グラフ:モバイル広告市場規模の推移(出典:電通の調査資料をもとに編集部が作成) |
電通が2月に発表した広告市場に関する調査レポート「2005年日本の広告費」によれば、2005年におけるモバイル広告費の市場規模は前年比60%増の288億円(グラフ)。これは1999年のインターネット広告市場(241億円)規模に相当する。
4月1日からは業界最大手のドコモが、FOMAのすべての料金プランにパケット定額制「パケホーダイ」を対応させる計画だ。これにより、2006年はパケット定額制がさらに普及することが予想される。PC向けのインターネット広告市場はADSLが普及して大きく伸びたことから、モバイル広告市場も同じように2006年以降、大きく市場が拡大するのではないかと期待されている。
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