YRPユビキタス・ネットワーキング研究所(UNL)と青山商事は3月9日、紳士服専門店「洋服の青山」池袋東口総本店にて、ユビキタスIDセンターが標準化を推進するICタグ「ucodeタグ」を利用し、生産から販売までの工程を一括管理するための実証実験を開始した。
UNLと青山はこれまで、スーツの生産や流通工程を中心にucodeタグを用い、実験を進めてきた。今回の店舗での実験は、実用化に向けた最終段階の実験となる。この実験は15日まで続けられる。
実験のオープニングには、UNL所長で東京大学教授の坂村健氏が登場した。同氏は、「これまでにもICタグで物流を管理する実験が他社や他団体によって行われていたが、それは1カ所内での物流にICタグを活用しているケースがほとんどだ。われわれが実施する実験は、中国のスーツ製造工場から大阪の物流センターを介して東京池袋の店舗までやってきたスーツが、それぞれの場所でどう管理されていたかという情報はもちろん、店舗内では顧客に対する製品情報も提供する。つまり、複数の企業や国をまたがって流通されるモノを総合的に管理すると共に、従業員と顧客では同じタグでも異なる情報が提供されるなど、状況に応じた対応が可能なものだ」と説明している。
洋服の青山にてデモを実施する坂村氏。手にしているのは新しく開発した業務用UC
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すでに終了した流通過程での実験では、生産工場から店舗までの各拠点におけるスーツの入出荷情報などをucodeで管理した。店舗での実験は、店内に設置したキオスク端末と、ユビキタスコミュニケータ(UC)と呼ばれる携帯端末を用意して、顧客に向けた情報と従業員向けの情報をそれぞれ提供する。店舗内に設置された端末からは、従業員向けの情報は閲覧できない仕組みだ。
顧客に向けた情報としては、スーツの素材や縫製方法などの情報をはじめ、そのスーツに合うワイシャツやネクタイなどお薦めのコーディネート情報、サイズや色の異なるスーツの在庫情報などが提供される。従業員に対しては、スーツの流通ルートや、輸送中のトラックやコンテナ内の温度や湿度、衝撃の情報などが提供され、輸送状況を元にアイロンのかけ直しが必要かどうかなどを判断する目安として役立てる。
輸送中の状況は、タグそのものが電源を持ち、通信距離も長いアクティブタグの「Dice」にて情報収集している。Diceは、スーツの出荷ロットごとに用意されており、内蔵された各種センサーで温度や湿度などの情報を取得する。なお、1着のスーツごとにつけられているucodeタグは、自ら電源を持たず、モノを識別するための番号情報だけが入っているパッシブタグで、通信距離はアクティブタグよりも短い。
業務用のユビキタスコミュニケータも発表
UNLでは同時に、ucodeを読み取る携帯端末UCの業務用端末として「業務用UC」を発表している。業務用UCは、業務利用で求められる高い防じん性や防滴性、耐衝撃性を備えているほか、電池の寿命も長くなっている。また、ucodeを元に関連情報を引き出す仕組みを搭載した。
業務用UCは、今回の実証実験にも利用されている。また、2006年5月からは、ユーシーテクノロジおよび提携販売会社よりシステム販売される予定だ。
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