YRPユビキタス・ネットワーク研究所所長で、東京大学大学院教授を務める坂村健氏は3月17日、「自律移動支援プロジェクト推進委員会」にてプロジェクトの報告を行った。坂村氏は、同プロジェクト推進委員会の委員長を務めている。
「自律移動支援プロジェクト」は、国土交通省推進の下、産・学・官・民が連携し、障害者や高齢者はもちろん、すべての人に場所情報を提供し、移動の支援を行う目的ではじまったプロジェクトだ。YRPユビキタス・ネットワーク研究所が開発する「ユビキタスコミュニケータ」などの情報端末と、街中に埋め込んだICタグを活用し、端末を持ったユーザーが、例えば「ここは千代田区神保町です」「右に曲がると駅があります」といった場所情報をICタグから入手できる環境を作り出そうとしている。
自律移動支援プロジェクト推進委員会 委員長 坂村健氏 |
これまでの主な活動としては、兵庫県神戸市で2004年10月から2005年1月にかけて行われたプレ実証実験がある。プレ実証実験では、交差点や地下街にてICタグ等の通信機器15種類の通信実験を行い、機器を逐次改良した。2005年4月からはじまる本格的な実証実験を前にした準備段階ではあるが、坂村氏は「すでに他の地方自治体からも多くの支持を得ており、委員会も拡大している。ここまで幅広く支持を得ている国家プロジェクトは他にないのでは」と述べている。
本格実証実験は4月より開始する。具体的な内容としては、通信機器の設置、機器へのコンテンツ入力、技術仕様書の策定などが予定されている。
まず3月末までに、新神戸駅、三宮駅、旧居留地、神戸市役所、六甲アイランドなどの地域において、プレ実証実験で性能を確認した通信機器などを設置する。その後、市民の協力を得て、民間店舗情報を配信するためのICタグ等を順次設置する。
場所情報などのコンテンツについては、まず重点エリアとして定めた「新神戸駅から三宮駅」「フラワーロード、京町筋」「メリケンパーク旅客線ターミナル」において、5月中に実証実験に着手できるようコンテンツを整備する。その他の地域については、6月末までにコンテンツを入力する。コンテンツ入力後、情報の内容や通信状況を確認した上で、市民モニターや専門家、行政関係者などから意見を聴取すると共に、機器の性能や耐久性などの技術検証も行う。
技術仕様書については、2006年度以降の全国展開を視野に入れ、共通プラットフォームとなる通信機器や通信方式、データベース、セキュリティポリシーなどのドキュメントを策定するとしている。
推進委員会では、それぞれの場所を識別する際に必要な固有のコード番号となる「場所コード」をICタグに付与するとしているが、この場所コードのあり方を検討する「場所情報検討委員会」を2月15日に設置した。また、運用にあたってのセキュリティポリシーをはじめ、情報の知的所有権、個人情報保護等について検討する「セキュリティポリシー検討専門委員会(仮称)」も2005年度早々に設置するとしている。
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