東芝とキヤノンは3月8日、開発中の次世代薄型ディスプレイ「SED」の量産開始時期を2007年7月に、SED搭載テレビの発売を2007年第4四半期に延期すると発表した。薄型テレビの価格下落が当初の予想以上に進んでおり、生産のさらなる合理化が必要と判断したためだ。
東芝とキヤノンでは2004年にSEDの試作機を公開しており、当初は2005年中にディスプレイを量産してSEDテレビを発売する計画だった。しかし液晶テレビやプラズマテレビの市場価格が年率20%以上下落していることから、市場で対抗できるだけのコスト競争力をつけるため、合理化が必要と判断した。
両社は2008年の北京オリンピックを市場拡大のターゲットとしており、2007年中のSEDテレビ発売を目標とする。価格については、「SEDは液晶ディスプレイやプラズマディスプレイよりも性能が優れており、まったく同じ土俵で戦うわけではないが、市場で戦える程度にはしていく」(キヤノン広報)とした。
SEDは電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)の一種で、基本的な発光原理はブラウン管ディスプレイと同じ。ブラウン管ディスプレイの電子銃に相当する電子放出部を、ディスプレイの画素数の分だけ並べることで薄型化を実現した。自発光型のため、液晶ディスプレイに比べて輝度が高く、鮮やかな色が再現できるほか、視野角が広いといったメリットがある。大型ディスプレイを持たないキヤノンや、薄型テレビで松下電器産業やシャープの後塵(こうじん)を拝した東芝にとって、社運をかけた一大事業となっている。
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