Applied Nanotech(本社;テキサス州オースチン)が、日本の電子機器メーカー6社と協力し、カーボンナノチューブの採用によって、現在市販されているものよりも明るく鮮明な映像を実現できる、25インチ型テレビの試作機を作り上げた。
この25インチ型テレビは22インチの表示領域を持つ。初期の14インチ型試作機と同様に、このテレビの画面には、デジタルテレビで散見される「ゴースト」が発生しない。
キヤノン、東芝、Samsungなどの家電メーカーは、液晶テレビやプラズマテレビと同等の薄さで、従来のブラウン管テレビの画質を実現できるテレビを開発しようと、カーボンナノチューブやダイヤモンド粉などの素材を使った実験を進めている。
Applied NanotechのCEO(最高経営責任者)Zvi Yanivによると、何年か後には、大型テレビ(50インチ以上)の市場では、これらの技術をベースにしたテレビが、リアプロジェクションテレビやプラズマテレビに対抗するようになるという。
従来のブラウン管テレビでは、細かく分割され、螢光体が塗布されたガラスに電子銃で電子を照射して画像を描く。しかし、電子を真空の広い空間で分散させる必要があることから、ブラウン管は大きくかさばる形状となっている。
だが、いわゆる電界放出ディスプレイ(FED)テレビでは、幅わずか数ナノメートルの尖った数千のチップに電子を振り分け、ここから電子を発射して画面に照射する。その結果、これらのテレビは液晶やプラズマのような薄型化が可能になる。
FEDテレビは製造コストの点でも有利だ。ナノチューブ、ダイヤモンド、あるいはほかの素材でも、FEDではこれらのチップがディスプレイのガラスにプリントされている。対照的に、液晶パネルやプラズマの場合は、もっと手の込んだ製造プロセスが要求される。数十年に及ぶ液晶のノウハウと、電子機器製造の経済的側面を合わせて考えれば、FEDテレビはマスマーケットでは液晶ディスプレイに太刀打ちできそうもない。しかし、FEDの優位性は大画面でこそ発揮されると、Yanivは述べている。
Applied Nanotechによると、このテレビの製造に利用されているプリント技術は、対角60インチの次世代テレビや対角80インチのHDテレビと互換性があるものだという。
キヤノンと東芝は1999年から共同で表面電界ディスプレイ(SED)と呼ぶ似たタイプのディスプレイの研究を進めている。両社はSEDテレビを2006年に発売する計画だ。
一方、Samsungはこのタイプのテレビに関して、リリース時期こそ明言していないものの、すでにプロトタイプを発表している。Samsung Electronicsの元社長で、現在は韓国の情報技術担当大臣を務めるDaeje Chinは、韓国が2006年にはカーボンナノチューブを使ったテレビを輸出できるようになると発言したことがあった。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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