楽天は2月16日、2005年12月通期(2005年1月〜12月)連結決算を発表した。EC事業やトラベル事業が好調な上に、2005年6月に買収した国内信販(現在の楽天KC)や、9月に子会社化した米LinkShareなどが加わったこともあって、売上高、利益共に過去最高を記録した(表1)。利益については、大幅な赤字を見込んでいたプロスポーツ事業が通期で黒字となったことから、全体も前期の大幅赤字から黒字に転換した。
代表取締役会長兼社長である三木谷浩史氏は、2005年について「当初予想したことはほぼすべて実現できた」と述べた。その背景としては、「東北楽天ゴールデンイーグルスの運営や、サービスにおけるブランドロゴの統一などにより、楽天ブランドの認知度が向上したうえ、事業間でのシナジー効果が発揮できたことが大きい」と説明した。
表1:2005年12月期連結決算概要
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事業別(表2)で見ると、EC事業では主力の楽天市場が12月に新規課金店舗数が過去最高の818社を記録し、出店店舗数が1万5000店舗を突破した。また、流通総額も順調に拡大しているが、特にモバイル(携帯電話)の流通額が拡大している。
また、具体的なシナジー効果としては、楽天市場から楽天証券への流入が加速した。第4四半期(2005年10〜12月)に、楽天市場を経由して楽天証券に新規口座を開設した比率が、全体の32.8%となり、前年同期の12.0%から20.8ポイントも上昇した。
さらに、楽天クレジットの新規申し込みに占める楽天グループ経由の比率は、第4四半期の平均で22%となっており、これまでの10%強から急上昇している。特に楽天のトップページと楽天プライズを経由した申し込みが多いという。
クレジット・ペイメント事業と証券事業を合わせた金融事業の売上高の比率は56.7%、経常利益の比率は63.1%になっている。楽天といえば、これまではECのイメージが強かったが、金融関連の比率が半分以上に高まっている。このほか、プロスポーツ事業ではグッズの販売が好調など売上高が当初予想よりも16%上回たことなどから、営業利益が当初予想した9億円の赤字に対して、1億円の黒字となった。ただし、強いチーム作りのために、投資は継続していく。
表2:事業別2005年12月期通期連結決算(億円、%)
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経常利益は連結調整勘定償却費(販管費)除いたもの
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2006年12月期の展望について、三木谷氏は「2005年に発揮できたシナジーをさらに進めて、新たな価値を創造していく」とした。そのためには、「ブランドの信頼性を一段と高めていくことをはじめ、サービスを集積して事業運営の安定化と成長の両方を同時に展開していく」と言う。
事業の安定化や信頼性の向上という意味では、2006年年初に起きた楽天スーパーポイントのキャンペーン騒動が思い起こされる。提携しているキャンペーンサイトにアクセスすると、期間限定で利用できる楽天ポイントがもれなく取得できる企画だった。しかし、このキャンペーンでポイントが付与されるURLがブログや掲示板などに複数掲載され、楽天の会員やキャンペーンサイトの会員がそのURLをクリックすれば、ポイントを複数得られるといった仕組みだったために、ネットで話題を集めた。
これに対して楽天は、「キャンペーンの趣旨とは異なる利用が多数見られたためキャンペーンを中止する」として、付与したポイントをいったんすべて取り消した。その後、「弊社が正規の利用であると判断したユーザーには順次連絡をとり、再度キャンペーンポイントを付与していく」とし、この「正規の利用」の定義を明らかにしなかったり、取り消される前にポイントで商品を購入したユーザーにはその料金を請求するなどとしたために、ユーザーは困惑した。
最終的に楽天は、「取り消したポイントを戻したうえで300ポイントを付与する」ことにした。この騒動について三木谷氏は、「我々の不手際で大変申しわけなく思っている。的確に取得したと思われる方にはポイントをちゃんと付与させていただくということにしたわけだが、素直にお詫び申し上げたい」とコメントした。騒動による収益への影響については「5、6000万円程度のマイナス影響が見込まれる」と述べた。2005年12月通期のEC事業の売上高で見ても、この金額は1%にも満たない。
また、東京放送(TBS)との提携について三木谷氏は「提携の内容を協議する分科会で話し合っているが、現時点で何も決まっていない」と、この分科会の動向を見守る姿勢だ。
さらに、今後の新展開として時期は未定だが、ポータル・メディア事業でソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を開始する予定であることも明かされた。楽天はSNSを手がけるグリーに5%程度出資している。グリーのシステムを使うかどうかは定まっていないが、コミュニティー事業として、楽天広場ブログ、楽天フォトアルバムに次ぐ新サービスの位置づけだ。
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